サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2019年12月29日号
令和2年の大予想!(4)五輪後も不動産価格は安定!というけれど...
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牧太郎の青い空白い雲/748

最近、M信託銀行に所属する「不動産のプロ」(不動産鑑定士)の講演を聴きに行った。演題は「東京五輪後の不動産マーケット」。興味があった。

と言うのも、巷(ちまた)では「2020年の東京五輪後、不動産価格や建築費は大幅に下がる」という漠然とした噂(うわさ)が流れていた。本当なのか? 気になる。
政府や東京都は「東京五輪の経済効果は約32兆3000億円」と試算している(17年3月)。でも、この数字は13年から30年までの累積。1年あたりに換算すれば約1兆8000億円。
「お上」の主張する数字には、いつもカラクリがある。
「この程度の経済効果」で、東京五輪後、日本の景気はどうなるのか?
   ×  ×  ×
会場はいっぱいだった。
第1部の「小泉孝太郎・進次郎兄弟のお母さん」(不動産関連会社の社員)の講演も人気だったが、「五輪後の景気」に的を絞った第2部は、みんなメモを取り真剣だった。
講師は「銀座の地価」から話を始めた。
「日本最高路線価である『銀座中央通り(鳩居堂前)』は現時点で坪1億5074万円。3年連続でバブル期の坪1億2066万円を超えている。直近の底値(13年)の2倍以上だ」
確かに、各地の最高路線価は上がっている(大阪・梅田「阪急百貨店前」は前年比27%アップ。神戸・三宮センター街「三井住友銀行三宮支店前」は25%アップ)。
宅地も全体として微増(全国の平均は標準宅地で前年比1・3%アップ)。もちろん、下落しているところもあるが、全体として不動産価格は上昇している。
講師は「比較的緩やかに上昇しているからバブルではない」と断言した。
この好景気は東京五輪以降も続くのか?
講師は「開催国のその後のGDP成長率」を紹介した。2000年のオーストラリアは翌年下落。04年のギリシャも翌年下落。08年の中国も下落。
五輪の翌年、開催国は不景気になるのか?
ところが、12年のロンドン、16年のリオデジャネイロの翌年のGDP成長率は上昇している(ただし、中国はGDP成長率は下がったが、住宅価格指数は上がり、ブラジルの場合は、成長率は上がったが、住宅価格指数が下落している)。
この傾向をどう見るか?
どうやら「経済のパイが小さな国・新興国」ではオリンピック後、不景気になったが......「先進国」では、そうでもないようだ。東京も大丈夫かもしれない。
   ×  ×  ×
しかし、そう簡単ではない。
不安要素は数々ある。最たるものは米中貿易摩擦だろう。このままの状態が続けば、20年、アメリカの実質経済成長率は最大0・95㌽下がる。中国も最大1・41㌽下落(IMF=国際通貨基金の18年10月の試算)。
日本は大きな影響を受けるだろう。
中国人旅行者の「爆買い」「爆旅行」は期待できない。
米中の摩擦だけではない。イギリスのEU離脱、ドイツ銀行の不良債権問題、イラン情勢の緊迫......何しろ、主だった世界の指導者が揃(そろ)って「自分ファースト」。わがまま勝手だ。
だから、何が起こるか、わからない。
例の「金融危機太陽黒点説」を思い出した。
17年3月5日号の本欄でも紹介したが、イギリスの経済学者、論理学者のウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(1835〜82)は「太陽黒点面積の増減は10年から11年ほどの周期があり、穀物価格の騰貴、下落にもほぼ同様の周期があり、恐慌の発生にもまた同様の周期がある」と主張した。
どこか不気味な「太陽黒点」は約9・5年から12年ほどの周期で「増えたり」「減ったり」を繰り返す。その太陽黒点周期と「景気の循環」が一致する!と言うのだが......リーマン・ショックから10年経(た)った今、もしかして、世界同時不況が2020年中にやって来るかもしれない。
当分、太陽の黒点を観察しなければ......冗談ですよ(笑)。

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