サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2019年8月11日号
「新選組」「吉本革命」の標的は"消費増税"で儲ける奴ら?
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牧太郎の青い空白い雲/729

10月1日から消費税が10%に増税されるらしい。

であれば、高額商品のマンション業界などは「◯月末日までに契約すれば消費税は8%のままですよ」と"煽(あお)り商法"に走るものだが、そんな気配はまるでない。

というのも、この業界、これまで2回も「10%への増税」延期を経験しているからだ。それに安倍晋三首相が「リーマン・ショック級の出来事が起これば......」と繰り返しているから「今回も延期!」と思い込んでいた。なぜなら、彼らは「リーマン・ショック級の不景気」を予感しているからだ。

   ×  ×  ×

世界経済がおかしくなっている。イギリスのEU離脱問題に始まり、米中の貿易戦争。「世界恐慌の火種」と心配されるドイツ銀行は事実上、経営破綻寸前? これらの影響がジワリジワリと日本経済にやって来た。

不動産価格はアメリカ、ヨーロッパ、中国などの一部で下落傾向が強まり、現実に、日本では2018年の首都圏新築マンション価格が6年ぶりに下落した。

もともと、日本の不動産市場は"いびつ"だった。人口激減、産業構造の変化で、国土の90%以上は「タダ同然」。残りの大都市、地方都市の一部だけが、超高値で売買されている。

「局地バブル」と言うのだそうだが、その「バブル」のシンボル、タワーマンションが売れ残っている。

以前、この欄で書いたが、初月契約率(販売が開始されたマンションの初月の契約率)は27年ぶりの低水準まで落ち込んでいる。

この業界では消費増税なんて「冗談は顔だけにしてくれ!」なのだ。

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景気は良くない。景気動向指数は2016年10月から18年8月まで23カ月連続で「改善」が続いた。が、18年9月から12月は「足踏み」。今年の1月から「下方への局面変化」という表現まで登場した。

誰が何と言おうが「アベノミクスの終焉(しゅうえん)」だろう。

景気が悪いのに、安倍さんは消費増税を強行するのか?

マンション業界だけでなく、ほとんどの業界で中小・零細企業は腹を立てている。

そんな中で、行われた参院選。投票率が50%を下回った。

日本人の半分が「政治」を信じていない。しかも、メディアが安倍内閣の作戦に加担?して「争点の多数化」を進めた。僕から言わせれば「消費増税」を最大の争点に絞り込めば、少なくとも投票率は上がった、と思う。

それが証拠に山本太郎代表の「れいわ新選組」という"諸派扱い"だった弱小政党が「消費税廃止!」を叫び、比例区で約230万票を獲得。2人が当選した。

その票数ももちろんだが、びっくりしたのは4億円を超える寄付金が集まったことだ。

街頭演説会で、10万円も寄付する男性を何人か見た。理由を聞くと「本気で消費税廃止!を言うのは山本太郎だけだから」という答えが返ってきた。

消費税の代わりの財源を、この政党は「お金持ち、大企業に払ってもらえばいい」という。累進税率を消費税導入以前に戻せば29兆円の税収が確保できる、というのだ。事実上、消費税導入で"減税"を受けた「金持ち」に厳しい「所得の再配分」を230万人が支持した。

   ×  ×  ×

吉本興業の「芸人クーデター」は「お金持ち」経営者に対する革命だった。「笑いの総合商社」は、実は超ブラック体質。タダ同然の安いギャラで、芸人を食い物にしている!という告発である。

標的は、高額の給与をもらっている会長、社長......芸人は「事務所と芸人の取り分は9対1。若いものは、ライブ1回の出演で数百円。消費税なんて払えない!」と打ち明ける。

令和の時代は「所得格差」をめぐる「闘い」の連続! そんな気がする。重ねて言うが、少なくとも「消費増税」はやめた方がいい!

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