サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2019年1月20日号
新春「人生100年」と「人口100億人」を考えた!
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牧太郎の青い空白い雲/701

新年、おめでとう!と言ってはみたが......2019年は我ら高齢者にとって「不安」だらけの年らしい(「高齢者」という言葉は使いたくないが、適当な言葉がないので、お許し願いたい)。
年末、挨拶(あいさつ)先で60代の税理士から「君、クレジットカード、使っているの?」と訊(き)かれた。例の消費税増税への愚かな経済対策......中小小売店で、クレジットカードなどで決済した買い物客に5%分のポイントを還元する!という「あの話」だ。
「カードは持ってはいますが......クレジットに使ったことはない」と正直に話すと「私も、そうなんだ」。で、税理士さんは、安心したような"顔つき"だった。
確かに、カードを所持する高齢者の数はそう多くはない。持っていても、ポイント制度はなじみが薄い。ポイントの使い方や商品との交換方法もカード会社によって違うようだし......高齢者にとっては面倒くさい。
大体「クレジット支払い」だけが優遇されるなんて......法律違反ではないのか?
間違いなく、これは高齢者イジメ?「ポイントより、カネよこせ!」の気分だ。
   ×  ×  ×
昨今「人生100年」という言葉がごく普通に使われるようになった。
喜ぶべきなのか?
クレジットカードを上手に使えるか?を真剣に心配している当方に「人生100年」は幸せなのか?複雑な思いだ。
人間は自然に「100歳」になった訳ではない。医療の進歩、社会保障の成長で、寿命が不自然に?延びた。要するに無理やり「100歳」になった。
長く生きれば、体は衰える。あちこちが痛くなる。平均寿命が延びたって、人間の身体が"長期使用"に耐えるようになった!という訳ではない。だから、誰でも、年を取れば、痛くなるし、病気になる。「100歳でも寝たきり」だったら......意味がないじゃないか?「人生100年」は必ずしも「幸せ」とは言えない。
   ×  ×  ×
長生きすればカネが掛かる。安倍首相は「健康寿命を延ばし、人生100年、元気に働き、医療費も削減!」と言っている。「三兎」を追う迷文句だが......そう簡単にいかない。
政府税制調査会が「人生100年時代」を見据え、老後に備え、「資産形成による自助努力をしろ!」と呼びかけている。公的年金の先細りは避けられないから、この「言い分」には一理あるが「自助努力」を可能にするのは経済的な余裕が必要だ。
ごく普通の「年寄り」は定年を迎えても働き続けるしかない。
まして、安倍政権はトランプ米大統領の言いなり。言われるままにアメリカから大量の兵器を購入し、その"副作用"で、昨年度の予算では「社会保障費の自然増のうち1300億円分」をカットした。
安倍さんの「アメリカへの属国化」が続けば、日本の「年寄り」はヨボヨボになるまで働く。それができなければ、サッサと死ぬしかない。
定年後も働くとしても......産業構造の変革で今後の労働市場はAI、IoTが主流。そこに高齢者が対応できるのか?
クレジットカード使用に一喜一憂している当方には「人生100年」は手放しでは喜べない。
   ×  ×  ×
それより、もっと重大なことがある。地球全体の人口爆発である。
国連の「世界人口予測・2017年改訂版」によると、地球の総人口は約75億5000万人。それが2030年には約85億5100万人に達し、2055年には100億人を突破するという。
先進国では、人口減が心配されているが、発展途上国は揃(そろ)って人口爆発である。
最近、人口減の日本でも「産めよ殖やせよ」という意見も出てきて「人生100年」と合わせると、もしかして「人口増」になるかもしれない。
ともかく、地球上では、1日に22万5000人が誕生している。もし、100億人が「アメリカ人並みの豊かな生活」を送るとしたら、資源は間に合うのか? 間違いなく、エネルギーは枯渇する。資源戦争が起こるだろう。
  ×   ×   ×
以上、正月になって考えたことを正直に書かせてもらった。どうでもよい話......だが、地球は大変だ!今年も「どうでもよい話」ばかりになりそうだが......ご愛読、お願いする。

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