サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2018年8月19日号
究極の特別扱い!文科省は一網打尽、アベ友は無罪放免
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牧太郎の青い空白い雲/681

「特別扱い」が苦手だ。「アイツだけは批判するな!」と言われても、「特別扱い」はできない。物書きは「平等」でなければ!
だが昨今、この国は「特別扱い」だらけだ。
文科省汚職。「アイツは特別だから」と東京医科大の前理事長が「文部官僚のセガレ」を裏口入学させた。文科省前局長が頼まれて東京医科大を「私立大学研究ブランディング事業」対象校に選ばれやすくした見返りだ。同大は選ばれ、助成金3500万円を交付された。「特別扱い」である。ほとんどの私学は国から私学助成金を受けているが、2017年度の交付額を見ると、東京医科大は約23億円。573大学の中で上から25番目の額だ。学生数から見ると多い。
確かに「犯罪のにおい」はする。
しかし、である。一方に、推薦入学という「特別扱い」が存在する。大学によっては「裏口入学の合格者より推薦入学者のほうが学力で劣る」というケースもあるらしい。こんな矛盾?が存在するのは「特別扱い」を認める制度があるからだ。
長くなるから説明しないが、「政府の補助金」に至っては「特別扱い」のオンパレードだ。
   ×  ×  ×
例の加計(かけ)疑惑で、安倍晋三首相は「今回の改革は国家戦略特区指定のプロセスに則(のっと)って行われ、一点の曇りもない」と断言した。
「特別扱いだから問題ないじゃないか!」と言うのだ。
ちょっと待ってくれ! そもそも「特定の地域だけに恩恵をもたらす特区」(つまり「特別扱い」)なるものは、憲法14条1項が「すべて国民は、法の下に平等」であり「政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めた規定に違反している。
少々、面倒くさいが「その違法性」を分析しよう。
安倍さんの「国家戦略特区」は小泉純一郎政権の「構造改革特区」、民主党の菅直人政権の「総合特区」とは、名前は同じでも中身が違う。
(1)「構造改革特区」や「総合特区」は、地域の活性化に力点を置いたが、「安倍特区」は特定の地域で規制緩和を行い、日本全体の経済成長を図る
(2)「構造改革特区」や「総合特区」は自治体の計画、要望をもとに認定されたボトムアップ方式だが、「安倍特区」は国(つまり安倍官邸)が指導する
(3)「構造改革特区」や「総合特区」は成功すれば、その事例を全国に広げるが、「安倍特区」は全国展開しない。
つまり「安倍特区」は基本的に「特別」を維持する制度。ある地域、もっとはっきり言えば「特定の組織・企業」が得をする「特別扱い」だ。
そこで「特別」を誰にするか?水面下で、醜い「特区争い」が始まるのは当然である。その典型が「加計問題」なのだ。
「構造改革特区」や「総合特区」には私利私欲が薄い。しかし(「戦略」「特別」「改革」という言葉を巧みに使っているが)「安倍特区」は醜い。奇麗であったとしても「安倍特区」は憲法違反なのだ。
一点の曇りもない? 冗談じゃない。初めから「真っ黒」なのだ。
   ×  ×  ×
前回、「恩赦」について書いた。
日本国憲法下では、恩赦の決定は内閣が行い、その認証は天皇の国事行為として行われる。つまり、時の政府が恩赦で「司法権行使の効果」を変動させる。多分、今回も自民党政権が権威保持のために大々的な「恩赦」を敢行するだろう。この「特別扱い」で、司法権はめちゃくちゃにされる。
「特別扱い」だから、何でもできる。恐ろしいではないか?
   ×  ×  ×
政治とは「改革」である。だが、それは「平等」が大前提である。
東京医科大が汚職に走った動機は、16年度の「私立大学研究ブランディング事業」に落選したことにある。198校の応募があり、選定されたのはわずか40校。そのうち2校が加計学園系列だ。
岡山理科大は「恐竜研究の国際的な拠点形成」で認定。創立10周年記念行事に安倍首相が駆けつけて、加計孝太郎理事長を「腹心の友」と呼んだことで知られる千葉科学大は「『大学発ブランド水産種』の生産」で選ばれた。同じ学校法人から複数選ばれたのは、加計学園だけである。この「特別扱い」が「文科省汚職」の温床になった。
ご存じのように、文科省汚職で文部官僚は一網打尽。安倍さんのため、公文書を改ざんした財務官僚は無罪放免!
今、話題のアマボクシング騒動。独裁会長の出身母体「奈良県」代表を「特別扱い」して、不正に勝たせていた。情けないが、「特別扱い」ニッポン!!である。

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