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2020年7月19日号
韓流ブームが止まらない!「愛の不時着」にはまるオンナたち
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ヨン様ブームから17年。再び日本人の涙腺を崩壊させる韓国ドラマが空前の支持を集めている。現代版〝ロミジュリ〟の誉れ高い「愛の不時着」。人気の理由は美男美女の壮大なすれ違い劇にあり?深掘りすると、かくも深い日本との違いが浮き彫りになるのだ。

「自転車で2人乗りをしたり、一緒にピアノを弾いたりという胸キュンシーンが毎回必ず入っていて、ドキドキが止まらない。叶(かな)わない恋と分かっていながら惹(ひ)かれ合う姿に何度も声をあげて泣いてしまいました」

こう話すだけで涙声になるのは20代のOL。コロナ禍で、生まれて初めて観(み)た韓国ドラマが「愛の不時着」(以下、不時着)だった。

韓国の財閥令嬢で起業家としても成功するユン・セリ(ソン・イェジン)がパラグライダー中に竜巻にさらわれ、北朝鮮との非武装地帯に不時着するところから物語は始まる。彼女は軍の将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に助けられ、やがて恋に落ちていく――。

動画配信サービス「ネットフリックス」で独占配信されている恋愛ドラマに〝涙腺決壊〟する視聴者が続出、全16話を見終わった後は「不時着ロス」に陥る人たちも現れた。2月末の配信開始以来、7月2日現在まで視聴トップ10圏内につけているのだ。

ブームといえば、今から17年前、ぺ・ヨンジュン主演のドラマ「冬のソナタ」が列島を〝席巻〟した。韓流ブームの先駆けとなり、2004〜05年にNHKで放映された時代劇「宮廷女官チャングムの誓い」は男性の支持も集める。続いてK――POPが人気を博し、第2次韓流ブームが到来。11年のNHK紅白歌合戦には、韓国の人気グループである東方神起やKARAらも出場した。だが12年、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が竹島(独島(ドクト))に上陸すると一気に退潮し、再び韓国コスメや食品に注目が集まる第3次ブームまでには5年ほどの時間を要した。そして今年、熱狂的支持とともに降臨したのが「不時着」なのだ。

「冬ソナ」時代と違うのは、主な視聴者が「40歳以上」のみならず、「20~30代の働く女性」でもあること。支持される理由は多様な要素が内包されているからだ。韓国ドラマ・映画愛好家の山本裕子氏はこう話す。

「38度線に引き裂かれる男女の恋という意味で、物語の筋は古典的な『ロミオとジュリエット』の構図です。韓国の王道ともいえるラブコメですが、そこに軍部内の勢力争い、北と南の精神や文化の違い、一人の女性のアイデンティティー獲得など多くの軸が組み込まれている。脚本も演出も非常に巧みです」

韓国ドラマでは過去、財閥出身のキャリアウーマンが描かれることはなかったが、「不時着」の主人公はまさにそれ。高飛車なヒロインが不遇な環境に置かれることで、真に大事なことに気付いていく姿が、多くの世代の女性に〝刺さった〟というのが山本氏の見立てだ。とりわけ女性の心をわしづかみにしているのが、主演俳優のヒョンビン。

「185㌢の長身に、相手役の女性が腕を回しても両手が届かないほどの広い肩幅。それなのに笑うとチャーミングだし、嫉妬する姿も可愛くて、もう虜(とりこ)です!」(50代・主婦)

堅物な軍人役を、ただ屈強なだけではない、優しくピュアな男として演じ切った。

「ヒョンビンは05年のドラマ『私の名前はキム・サムスン』でブレークしました。最高視聴率50・5%を記録した韓流ラブコメの傑作です。そして10年にドラマ『シークレット・ガーデン』で再ブレークし、地位を不動のものにした。でも、その人気絶頂のさなかに海兵隊に志願したんです。最も過酷な海兵隊を選んだことで、〝韓国の男の模範〟〝男の中の男〟として一目置かれる存在になりました」(山本氏)

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