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2020年5月31日号
カルチャー 面白がっても真面目に製造中!師匠の飛沫を止めた「前座マスク」
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落語家の林家彦いちさん(50)がマスクの製造を提案し、長野県下諏訪町で始めた。きっかけは同町の有志が開いてきた落語会。会員には町工場に勤め、レーザーカッターという工作機械を使える人がいた。「それを使えばマスクが作れそうだ」という話が持ち上がった。

地元の人と彦いちさん一門の前座3人が共同で作業を担うことにした。寄席が休業要請の対象になったため、前座は活動の場を失った。マスクの仕事は収入減を確保する意味もある。

製造を担当するのは、一番弟子のやまびこさん(24)。入門したばかりの頃、同町のそば店「山猫亭」で数カ月修業したことがある。地元の人と共同でポリエチレンの素材をレーザーカッターで裁断してマスクに仕上げ、衛生面に気を配ってパウチ包装にした。

三番弟子のひこうきさん(22)が「師匠の飛沫(ひまつ)を止めた! 噺(はなし)家 前座マスク」「立体形状 洗える すぐ乾く 口紅がつきにくい」などと商品説明を記したラベルを貼り、二番弟子のきよひこさん(32)が発送を担当する。

彦いちさんのウェブサイトで5月5日までに2回注文を受け付け、同町の飲食店でも販売した。彦いちさんが言う。

「面白がってやっているので、苦労は特にないです。弟子たちもネタにしようとしてるようですね。社会人経験のあるきよひこはテキパキ動け、ひこうきはメール対応が速いなど、普段は気がつかなかった、いいところを発揮しております」

3人はマスクの製造・販売で前座の給金を上回る収入を目指しているという。

「中身がセコかったらしょうがないので、みんなで全力でいいものを作りました。何事も面白がって、この時期を乗り越えましょう。寄席や会場で会えることを楽しみにしています」(彦いちさん)

彦いちさんはカヌーでカナダのユーコン川を下ったり、エベレストの映画撮影現場に出向いて落語をしたりと、行動派で知られる。今回も素早い行動が頼もしい。

(小出和明)

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