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2020年5月24日号
映画 数奇な運命たどった「ひまわり」 公開から50周年にデジタル修復
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第二次世界大戦に出征したまま行方不明の夫を求め、言葉も通じない冷戦下のソ連を捜し回るイタリア人妻。その悲しい愛を描いたイタリア映画「ひまわり」が、初公開から半世紀となるのを記念し「ひまわり 50周年HDレストア版」との題名で近々公開される。「ひまわり」は1970年に初公開され、日本では洋画興行5位の大ヒットに。その後も何度となく上映されてきた。

節目の年に今回、配給元となるアンプラグドの加藤武史代表は「本国で記念公開をするのか」と上映権などを持つイタリアの権利会社に問い合わせた。答えは「アカデミー賞受賞の『自転車泥棒』や『昨日・今日・明日』と比べると、『ひまわり』はソフィア・ローレンが国内の女優賞を獲得したくらい。ヴィットリオ・デ・シーカ監督の主要作ではないので、特に考えていない」。加藤代表は「日本が世界で一番この作品を愛していたことが分かり、独自に公開しようと決めました」。

肝心のネガは権利会社にあったが、ネガ缶の蓋(ふた)をあけるとボロボロで、とても使える状態ではなかったそうだ。加藤代表は「というのも元々、(プロデューサーの)カルロ・ポンティの製作会社が倒産して資料も権利も分散状態に。伊、仏、日、米、どこにもネガがないので、日本のみでポジフィルムからデジタル修復をすることにしました」と名作復刻の裏側を語る。

「HDレストア版」とは高精細・高解像度による修復・修正を意味する。画面の揺らぎや色調を修正し、ノイズを消す。ただ、セリフと音楽が一体になった部分はさすがに無理だった。修復は難作業というより、ひたすら細かな作業の連続だったという。

「ひまわり」は愛情、戦争の惨禍、歳月の重さを描いてメロドラマとしても、反戦映画としても不朽の一作だ。「いかに集中して観てもらえるか。修復が気にならなかったと言われれば成功です」と加藤代表は言う。

(南條廣介)

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