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2024年6月 2日号
社会 最多7200人が過疎地で 田舎暮らし促す「協力隊」制度
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 緑に囲まれた土地で農業をして暮らしたい、自然豊かな環境で子育てしたい――。縁もゆかりもない田舎への移住はハードルが高いものの、夢へ向かってチャレンジする人は増えている。

 総務省は4月、全国で地域おこし協力隊として活動する人が昨年度、過去最多の7200人に上ったと発表した。地域おこし協力隊は市町村などの募集に応じて都市部から移り住み、過疎地の活性化に従事する取り組みだ。新型コロナウイルスの感染拡大で高まった地方移住への関心の継続も、増加要因の一つと言えるだろう。

 任期は1~3年。活動内容は農林漁業の支援、観光情報発信、新ビジネス創出などさまざまだ。報酬を得ながら、その土地になじむことができる。15年前の制度開始以降、受け入れ自治体も右肩上がりで増えている。

 インターネットの募集サイトを見ると、「川くだりの船頭」「写真と文章で空き家を生かす仕事」といったユニークなものもあれば、「観光協会スタッフ」「農業従事者、未経験でも可」など、とっつきやすそうな仕事も並ぶ。

 協力隊へのサポートは年々拡充している。今年度の場合、国は自治体に対して協力隊員1人当たり年520万円まで財政支援を行い、このうち320万円が隊員の報償費に、200万円が活動費に充てられる。住宅についても、こうした予算を使って市町村が用意することが多い。

 しかし、任期終了後はどうやって生計を立てるのか。制度を活用して2017年に北海道足寄町に移り住んだ儀間雅真(ぎままさなお)さん(37)の場合、趣味を本格化させたエゾシカ猟と民泊経営をなりわいにしている。

 以前は神奈川県でサラリーマンをしていた儀間さん。狩猟をしたいという思いが高じて移住を決めた。今ではライフルで年100頭余りを仕留め、自ら食肉処理をして東京、大阪などのレストランに販売する。

 民泊は協力隊2年目に手探りで始めた。町は当初、副業を認めていなかったが、「任期終了後にいきなり始めてもうまくいくはずがない。給料があるうちにやっておくことが大事」と考えた儀間さんが説得。「ゲストハウスぎまんち」の開業にこぎつけた。

 任期中は活動費を使って起業セミナーに積極的に参加した。「ジビエ関係の研修やハンターがやっている宿の視察にも行かせてもらい、同じ志を持つ人とのつながりが広がった」

 制度を使って移住を考える人へのアドバイスを、儀間さんに聞いてみた。

「これをやるという目標を明確に持っていた方がいいでしょう。そうでないと、役場から振られた仕事をこなすだけで終わってしまうかもしれません」

 総務省のまとめによると、昨年3月までに任期を終えた協力隊員は1万1000人余りで、このうち約65%が任地周辺に定住したという。儀間さんのように起業する人もいれば、農業に就いたり、役場などに就職したりする人も多いようだ。

(橋本謙蔵)

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 ◇はしもと・けんぞう

 1975年生まれ。ライター。通信社記者を経て、現在は愛知県の山間部、奥三河地域を拠点に活動している

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