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2021年12月26日号
社会 「安否不明者の氏名を公表する」 吉村洋文大阪府知事が方針転換
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 災害時に安否不明になった人の氏名を公表するかどうかは自治体によってまちまちだ。大阪府の吉村洋文知事は原則として公表する考えを示した。12月2日、報道陣に「氏名を公表した結果、行方不明と思われていた人が避難していたと判明すれば捜索の必要がなくなる」と効率性を強調。「救命活動に資する場合には、家族の同意がなくても氏名を公表すべきだ」などと述べた。

 個人情報保護法16条3項は個人情報保護の例外として、〈人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき〉とする。しかし、現実には安否不明者の氏名や年齢を発表しない自治体が多い。

 しかし、7月に静岡県熱海市で土石流が発生した際、同市は2日後に安否不明者64人の氏名を公表し、安否が迅速に確認できた。そこで内閣府は9月、氏名の公表について、都道府県に検討するよう通知。全国知事会は公表することで救助活動が効率化し、家族らの混乱を防ぐ公益性があるとしている。

 大阪府には公表基準がなかったが、安否不明者については家族の同意がなくても原則として①氏名②年齢③性別④住所(町名まで)を公表する方針を固めた。ストーカーや家庭内暴力の被害者で、住民基本台帳の閲覧が制限されている人については公表せず、死亡者は遺族の同意を条件に公表する。府危機管理室災害対策グループの担当者が言う。

「安否不明者の救助が第一ですが、亡くなった人の氏名を公表して遺族などに迷惑がかからないか、住民基本台帳で確認したい」

 2019年10月、千葉県で起きた水害の際、自治体は犠牲者や不明者などの氏名を伏せたので苦労した。取材する側が苦労するだけならいいが、個人情報の保護を理由に助かる命が助からないことになってはならない。柔軟かつ迅速な運用を望みたい。

(粟野仁雄)

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