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2024年5月 5日号
経済 社長の平均年齢は60.5歳 後継者不在の倒産も増加中
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 日本の社長の高齢化が続いている。帝国データバンクがこのほど発表した調査結果によれば、2023年の全国の社長平均年齢は60・5歳で33年連続上昇という結果になった。

 この数字は前年比で0・1歳高く、1990年に比べると6・5歳高い。さらに社長の年代別構成比では50歳以上が全体の81・0%を占める。一方で若手経営者は30代が2・9%、30歳未満が0・2%にとどまり、合わせても80代以上の5・3%に満たない。

 少子高齢化を考えれば自然な結果だろうか。都道府県別に見ると、秋田県が62・5歳と6年連続で最も高く、62・4歳の岩手県が続いた。秋田県事業承継・引継ぎ支援センターの担当者は「秋田は高齢化率でも全国トップであり、必然的に経営者の年齢も高くなっていると考えられます」と分析する。

 社長の高齢化の背景には、事業承継の問題が大きい。2023年度、全国で後継者不在を理由に倒産した企業は586件で、前年度から99件も増加した。

 秋田では全国に先駆けて県内各地に専門相談員を配置し企業の悩みを聞いてきたものの、23年の後継者不在率(帝国データバンク調査)は70・0%で全国2番目に高い。前出の担当者が説明する。

「今は親の家業を子どもが継ぐという時代ではなく、後継者になり得る若い世代が県外へ出て行ってしまう。また経営者の話を聞くと『自分が苦労してきたから継がせたくない』という声も聞かれます」

 一方で、最も若いのが59・4歳の三重県。後継者不在率も全国平均が53・9%に対して三重は30・2%と一番低い。三重県事業承継・引継ぎ支援センターの担当者は「自治体や金融機関、商工会などが『オール三重』で事業承継の問題に取り組んできました」と胸を張るとともに、土地柄にも言及。大企業がある中京と近畿の経済圏に接する場所にあるため、企業の安定経営につながっている可能性があるという。

 社長の高齢化はリスクを伴う。後継者難による倒産のうち約4割は経営者の病気や死亡が主因。帝国データバンクは「高齢化が進めば、不測の事態が生じる可能性は自(おの)ずと高まる。円滑な事業承継を確実に進めていくためには、計画的かつ余裕のある準備が必要」としている。

 リスクは健康面だけでない。ビジネスの成長においても懸念がある。企業取材を続けている経済ライターは危機感を示す。

「経営は世の中のトレンドや新しい価値観を把握しておくことが大事。年齢で一括(くく)りにはできませんが、最近ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)や生成AI(人工知能)の中身を理解できていない高齢のトップも多い印象です。経営者の理解不足によって活用が進まないというのが大きな問題です」

 経営者が築き上げてきた日本の技術力やブランドを次世代へつなぎ、アップデートしていけるか。分岐点に来ている。

(一ノ瀬伸)

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