サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年8月 4日号
被選挙権を下げろ!「18歳の知事」が生まれてもいいじゃないか?
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牧太郎の青い空白い雲/953

 東京都知事選が終わっても石丸伸二さん(41)が話題をさらっている。なにしろ(広島県安芸高田市長を務めた経験はあるが)、ハッキリ言って「ぽっと出の青年」が無所属で約165万票も獲得したのだ。当然だろう。
 石丸さんって、どんな人物か?
 それなりに勉強したが、分かったことは「周囲を煙(けむ)に巻く」のがお得意......。79歳の当方には「正体不明」のように見えるのだが......。出口調査によると20代までの、いわゆる「Z世代」の4割強が石丸さんを支持したらしい。若者たちが企業、宗教、地域などの「組織的動員」ではなく、自らの判断で選挙権を行使したのは「石丸現象」のお陰かもしれない。
 2016年6月から選挙権が「満18歳以上」になって何度か選挙が行われたが、初めて投票所に行った「10代の意向」が形になったような気もする。すこぶるケッコウである。
 しかし、わが国は相変わらず「若者を排除する」お国柄。10代の若者は投票できるが、立候補できない。
 大日本帝国憲法下で選挙制度が導入された時、時の政府は選挙権・被選挙権は「金持ちの納税男性」だけ。欧米各国が「選挙権年齢を21~25歳以上、被選挙権年齢を25~30歳以上」としていたので、これを真似(まね)た。
 当方から見れば、究極の政治差別である。
 戦争に負けた1945年。やっと参政権が女性にも拡大されたが、以来、選挙権は20歳以上、被選挙権は25歳以上とする普通選挙制度が続いた。しかも、参院議員と知事の被選挙権については30歳以上。明らかに「年齢による差別」が続いた。2015年、70年ぶりに参政権の拡大を目的に公職選挙法の改正が行われ「選挙権は満18歳以上」となったが、なぜか被選挙権だけはそのまま。なぜ、選挙権と被選挙権を同じ年齢にしないのか?
 よく分からない。
 海外では、被選挙権年齢の引き下げが相次いでいる。OECD(経済協力開発機構)加盟の38カ国では、すでに過半数が「選挙権と被選挙権を満18歳以上」に統一している(最近、被選挙権年齢の引き下げを実施した国はフランス、リトアニア、メキシコ、韓国、トルコ、イギリスの6カ国)。
 確かに人間は、年齢や経験で判断力を手にする。歳(とし)をとれば「思慮分別」も生まれる。年齢は選択する「物差し」の一つだろう。
 しかし、若者には「可能性」がある。ここ30年間、日本は沈滞し、ビンボー国になってしまった。日本を再生するには「若い力」が必要だ。若者のチカラ、年寄りのチカラを結集しなければ......。
「18歳の知事」が生まれてもいいじゃないか? もちろん100歳の知事が誕生してもけっこう!
 それが「平等」というものだ。


 ◇まき・たろう
 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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