サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年7月21日号
姫路城入場料が外国人だけ30㌦? この「二重価格」に池田輝政は...
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牧太郎の青い空白い雲/952

最近、旅チャンネルで「姫路城と池田輝政」をテーマにした歴史番組を見た。

 主人公の「池田輝政」という人物は波瀾(はらん)万丈。永禄71565)年、織田信長の重臣・池田恒興の次男として尾張国清洲で生まれたが、ある時は織田信長に仕え、ある時は豊臣秀吉に仕えた(秀吉が京都の大徳寺で信長の葬儀を催すと、輝政は羽柴秀勝と共に棺(ひつぎ)を担いだ)......。そして、慶長51600)年の関ヶ原の戦いでは、豊臣の敵・徳川家康に加担した。

 その波乱に満ちた人生は「城の変遷」に表れる。初めは美濃国池尻城の城主、続いて大垣城、岐阜城、三河国吉田城と何度も「引っ越し」......。最後は、関ヶ原の功績で「52万石の播磨国姫路藩初代藩主」になり姫路城主となった。

 法隆寺地域の仏教建造物とともに日本初の世界文化遺産に登録された姫路城。この番組は、戦国武将・池田輝政が行った大修理が「日本の宝」を守った!と紹介していた。

 姫路城も戦火に巻き込まれそうになった。近くは、太平洋戦争。姫路地域は軍需産業の拠点になっていたが、なぜか姫路城はアメリカ軍の爆撃対象にならかった。

 経済的にはアップアップだった。明治維新後、姫路城は国有化されたが、老朽化が激しく保存修理もできず民間に売却されることになった。競売で姫路米田町の「神戸清次郎」が2350銭で落札。城の瓦を大量に売るのが目的だったようだが、瓦を一般家屋に転用するには大きすぎ、姫路城はそのままにされ、権利関係も不明瞭になった(昭和2年、息子の「神戸清吉」さんが「姫路城は父が落札したはずなのにいつの間にか国有になっている」と主張。騒ぎになったが裁判にはならなかった)。

 ともかく「城」を守るのはカネがかかる。ところが、この円安。突然、大事件が起きた。

 姫路市の清元秀泰市長が「姫路城の入場料をもっと値上げしようかと思っている。外国の人は30㌦払っていただいて、市民は5㌦ぐらいにしたい」と言い出したのだ。「多くの人が(城に)のぼると天守閣が傷む。外国人観光客に負担を求めることは海外では常識」などと説明したが......。円安で外国旅行者が急増しているので「ひと儲(もう)け」しようという魂胆? 現在、姫路城の入場料は18歳以上1000円(小学生~高校生300円)。外国人観光客の入場料が30㌦になった場合、仮に1160円として計算すると4800円。確かに儲かりそうだが、この二重価格。「国籍差別」ではあるまいか?

 下から姫路城を見上げるとシラサギが羽を広げたように見える。その優美な姿を「池田輝政」が意識したのかどうか分からないが、「白鷺城」と呼ばれるようになった。下から見て満足して、入場料を払わない外国人が増えるぞ!と輝政は苦笑いではないか(笑)。

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