サンデー毎日

国際
News Navi
2024年6月 9日号
国際 「虐殺」はガザ地区以外でも 常態化したイスラエル軍の〝占領〟
loading...

 午前1時半。ズズズズズ......という、不気味なノイズが上空にせまる。昨年12月、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区北部、ジェニン県中心部の街の一角に広がる難民キャンプを取材中、イスラエル軍の攻撃が始まった。頭上のノイズは、夜空を漂うドローン(無人機)が発するものだ。数ブロック先からは乾いた銃撃音が絶え間なく響いていた。

 ジェニン難民キャンプの住人たちは、1948年のイスラエル建国に伴い土地を追われ、家を失った人々とその子孫だ。

「難民キャンプ」といっても、数十年という避難生活の間に、テント群は密集した住宅地に姿を変えた。崩れかけた壁面やシャッターには「殉教者」の写真が貼られている。庇護(ひご)する者のいない市民の一部は武器を手に、重装備のイスラエル軍へと立ち向かっていく。

 2023年10月7日以降、イスラエルの「報復攻撃」によるパレスチナ自治区ガザ地区内の死者は、今年5月時点で3万4000人を超えている。新生児までも犠牲となる攻撃の在り方は、「自衛を超えた虐殺」であり、「民族浄化」との非難も上がる。国際刑事裁判所は5月20日、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を請求した。

 こうした惨劇は、突如始まったものではない。第二次世界大戦以降、棚上げにされてきた「人種差別」は、イスラエル建国の過程で新たな排除を生んだ。恐ろしい虐殺は「21世紀のホロコースト」とも言える。

 暴力や略奪は、連日のように報道されているガザ地区だけで起きているわけではない。パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区では、イスラエル軍による「占領」が常態化し、国際法違反の入植や襲撃が続いている。パレスチナ自治政府が「行政」と「治安」、どちらも管轄しているのは全体の約2割にすぎない。イスラエル軍の襲撃は日常茶飯事というのだ。

「オレたちはここでは〝最下層〟なんだ」と語る西岸地区出身の男性が、こう続けた。

「イスラエル人の中でも、白人がまず優位であり、ほかの有色人種は2級市民として扱われる。そしてイスラエルの居住権を持つアラブ人はさらに下。西岸やガザに暮らすオレたちは犬猫以下の扱いでしかない」

 その言葉を裏付けるかのように、8歳の子どもですら「テロリスト」だとして頭を撃ち抜かれる。数百年前から先祖代々その土地に暮らしているという遊牧民の男性は、重火器で立ち退きを迫られているが、抵抗すれば最悪、殺されてしまう現実がある。

「70年間、日本も含め国際社会はなぜ、ここで起きていることに沈黙してきたのか理解できない。何が正しいか、何が間違っているか、こんなにも明らかなのに」と、現地のジャーナリストは語る。

 なぜ世界はこの虐殺を止められないのか。「私たちと同じ人間が殺されている」という現実を、忘れてはならない。

(佐藤慧)

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム