横浜銀行はワタミに「資本性ローン」を供与し、同社の業態転換を後押しする。ワタミが運営する居酒屋の3割に当たる120店を、2022年3月までに「焼肉(やきにく)の和民」に転換するのが柱だ。同社の渡邉美樹会長兼グループ最高経営責任者は9月30日付『夕刊フジ』の連載にこう書いた。
〈ワタミは、横浜銀行がコロナ後はじめて実施する、資本性ローンの第1号に選ばれた。外食業界初、上場企業としても初となる。30億円を調達し、コロナからの反転攻勢の態勢が整った〉
金融庁の説明資料によれば、資本性ローンとは〈負債ではなく、資本とみなすことができる借入金のこと〉。銀行から資金を借りながら負債として計上しないで済むため、〈財務内容が改善され、新規融資が受けやすく〉なるという。「借り手の経営が改善する見込みがある」と銀行が判断した場合に実行するタイプのローンで、〈担保付借入金は、基本的には、「資本性借入金」には該当しない〉。つまり、ワタミは浜銀に新たに担保を差し入れることなく、30億円を手にできたようだ。大矢恭好頭取は狙いをこう話す。
「当行をメインバンク、準メインとしている企業に資本性ローンを入れることで、他の債権者や取引先は『銀行がしっかりと支える』とみなし、信用力の補完につながる。銀行が地元経済に必要だと思われ、特に重要だと思われるお客様とどっぷり付き合っていくための一つの手段だと捉えています」
ワタミのウェブサイトによれば、創業4年後の1988年、浜銀から無担保融資を受けた。浜銀はそれ以後、ワタミのメインバンクになったという。渡邉氏は前出の連載に〈「ワタミは乗り越えるのではないか」との評価が審査のポイントになったと聞く〉と書いた。
資本性ローンは通常の融資に比べ、借り手が倒産した場合に資金を回収できないリスクが高い。「ブラック企業」問題が再燃するワタミに死角はないのか。浜銀の目利きが問われる。
(森岡英樹)