東京都のある中小企業は今夏、金融機関から無利子・無担保の「新型コロナウイルス対応融資」を受けた。しかし、売上高の減少は止まらず、「上限いっぱいまで借りましたが、あと数カ月で底をつきそうになっています」と、社長は話す。
「今、望んでいるのは、無利子・無担保の融資を再度受けることです。菅(義偉首相)さんは融資額の上限を引き上げてほしい」
菅氏は自民党総裁選を前にした9月12日の公開討論会で、こう述べた。
「雇用と事業が継続できるよう政府として責任をもってやっていく。給付金や無担保・無利子の融資でつなぎ、これで収まらなければ次の手は打っていく。必要であればしっかり対応したい」
内閣府の資料によれば、地方銀行や信用金庫など民間の金融機関が実行した実質無利子・無担保の融資は8月25日までに約12兆円に上る。日本政策金融公庫と商工組合中央金庫もほぼ同額の実質無利子・無担保融資をした。日本政策投資銀行の危機対応融資を加えると、総額は26兆円を超す。
民間金融機関が実質無利子・無担保の融資ができるのは、国が自治体を通じて利子を補助するからだ。借り手が返済できなくなった場合、各地の信用保証協会が返済を肩代わりするから、金融機関は貸し倒れリスクを心配することなく貸し出せる。融資の上限額は4000万円だ。前出の社長は政府が融資上限を引き上げ、再度の借り入れを望んでいる。金融界ではそんな借り入れを「おかわり融資」と呼んでいる。
金融機関は既存の融資についても貸し出し条件の変更にも対応している。「貸し出し条件の変更を申し出た中小企業の貸出先のうち、ほぼ100%に近い割合で応じている」(地銀幹部)という。
中小企業の倒産や廃業は増加傾向にある。それを防ぐため「おかわり融資」を必要とする企業は多い。次の山場は、資金繰りがタイトとなる年末になりそうだ。
(森岡英樹)