金融庁長官に氷見野良三氏(金融国際審議官)が昇格した7月20日付人事異動から1カ月少々。金融界はこの人事を二つの面で注目している。
一つ目は森信親元長官時代にいびつになっていた「入省年次の逆転」がほぼ解消されたことだ。氷見野氏の後任には森田宗男(ときお)氏(総合政策局長、1985年大蔵省入省)が就いた。後任には中島淳一氏(企画市場局長、同)、その後任には古澤知之氏(証券取引等監視委員会事務局長、86年)を充てた。栗田照久監督局長(87年)は留任した。
二つ目は監督局銀行2課長に新発田龍史(しばたたつふみ)氏(銀行1課長、93年)が就いたことだ。金融庁関係者が説明する。
「銀行1課長はメガバンクなど大手金融機関を所管し、同2課長は大手地銀など地域金融機関を所管します。1課長から2課長に異動する人事は異例です」
金融界は「遠藤俊英前長官が退任するにあたり、地域金融機関に示した最後のシグナル」と受け止めている。遠藤氏は退任直前の7月中旬、地域金融機関トップとの最後の会合で次のように語った。
「地域金融機関については持続可能なビジネスモデルの構築が課題である。このためには、経営トップの皆様の決断と実行が重要であり、具体的なアクションに踏み出していただきたいと折に触れて申し上げてきた。実際、さまざまな動きが見られるが、全体としては、多くの地域金融機関で経営改革が進んでいるというところまでは至っていないと認識している」
地域金融機関の経営改革は氷見野氏に引き継がれた。新発田氏が銀行2課長に就いたのは、金融庁の意思表示と映る。
地域金融機関の経営環境は厳しさを増している。直近の4〜6月期決算では、上場する地方銀行78行・グループの連結最終損益は前年同期比42%減。全体の6割にあたる48行が減益か赤字となった。地域金融機関の経営改革は待ったなしだ。
(森岡英樹)