阿木燿子の艶もたけなわ/315
コワモテで、茶目っ気たっぷり。不思議な魅力で視聴者にも巨匠たちにも愛され、映画にドラマに引っ張りだこの六平さん。一見豪快でワイルドな印象ですが、都内屈指の進学校から美大の大学院まで進んだ、知的で芸術家肌の顔も。本誌連載でもおなじみの佐野史郎さんら旧友たちとの爆笑エピソードに独自の演劇論まで、必読のお話ぞろいです。
◇「状況劇場」では、10年いて20万円ももらえなかった(笑)。
◇ろっぺいちゃんって、落ち込んだことがないって言ってたわよね?
◇夜眠れないとか、胃が痛くなったとか、生まれてこのかた一度もないですね。
阿木 元気ね、ろっぺいちゃん。朝まで飲んでたんですって?
六平 あれ、もうそんな情報が(笑)。
阿木 私、早耳なんです(笑)。
六平 今朝は4時まででしたけどね。「明日、阿木燿子さんと対談なので、早く帰って寝なくちゃ」と言ってたんですが、話が弾んじゃって。
阿木 常日頃(ひごろ)、私達は御本名の六平さんじゃなく、ろっぺいちゃんと呼ばせてもらってますが、今日もそれで。
六平 もちろんです。先輩の役者さんも宇崎(竜童)さんもみんな、そう呼んで下さるので、ぜひ。
阿木 私、20年前から自宅のスタジオを開放して、「ひふみレインボー」というコーラスグループを主宰してるんだけど、ろっぺいちゃんは昨年から、そのメンバー。でも、今年はこのコロナ禍で全然レッスンが出来ない。ろっぺいちゃんとも今年のコーラスの新年会で会ったのが最後だったのでは?
六平 いえ、その後にお稽古(けいこ)が2度あって、俺、行きましたもの。その時、月謝も払ったし(笑)。
阿木 そうか、その後ね、安倍首相から自粛要請が出たのは。
六平 みんなに会いたいですね。でも、まだ危険でしょう?
阿木 ウチのスタジオは狭いので、3密も良いところ。そこにろっぺいちゃんみたいな声の大きい人が入ると、なおさら(笑)。
六平 だから「ひふみ」のお稽古が再開したら、世の中は平常に戻ったと思って良いですね。
阿木 本当ね。「ひふみ」は高齢者のメンバーも多いし。ろっぺいちゃんは若い方じゃない?
六平 いえいえ、高齢組です。
阿木 そもそも何故(なぜ)、ろっぺいちゃんがコーラスに入ることになったかというと、ろっぺいちゃんがホストをなさっていたラジオ番組にゲストに私が呼ばれたのが、きっかけなのよね。
六平 そうです。それで私が「燿子さんは普段、何をしてるんですか?」と聞いたら、「コーラス」と仰(おっしゃ)ったんですよね。それで「俺も入れてもらえますか」って、お願いして。
阿木 あの時、私、本当にびっくりして。だって間髪入れず、言葉が返ってきたので、「なんて迷いのない人だろう」って。その後、お稽古に来てくれるようになってから、2度びっくり。ろっぺいちゃんって、本当に垣根が無くて、誰とでもすぐ仲良くなれる。どうしてそんなにボーダーレスなの?
六平 うーん、何でしょうね。人間が好きだからですかね。例えば芝居で科白(せりふ)のやり取りをしていても、すぐ相手役の人を良いな、と思っちゃう。「欲望という名の電車」の舞台をやっていた時は、大竹しのぶさんとラブシーンがあって、毎回、おでこにキスして、まぶたにキスして、唇にキスしてました(笑)。「しのぶさんは二の腕がちょっと太いけど、素敵(すてき)だよ」って言いました。
阿木 何でそこで〝二の腕〟が出てくるの?(笑)。
六平 だって御本人が聞くんですもの。
阿木 そんな余計なことを(笑)。でもそう言えるのは、お互いに信頼関係があるからよね。
六平 そうです。俺だって相手を選びますから。こんな俺にも嫌いな人は居るんですよ。あえて名前は言いませんが。
阿木 聞かなくてもわかる気がする。例えばスタッフを怒鳴りつけたり、上手(うま)そうに演じる俳優さんとか?
六平 そう、さすが燿子さん(笑)。