サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2026年2月 8日号
恐れ多いことだが...一官僚が「解散」に天皇を利用している!?
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牧太郎の青い空白い雲/1013 

 沖縄の「黄金言葉」(クガニコトバ)に【寝んとーしぇー 起くさりーしが、寝んたんふーなーや、起くさらん】というのがあるらしい。「寝ているのは起こせるが、寝たふりは起こせない」という〝ことわざ〟。居眠りを注意されれば、ごく普通の人は襟を正す。「寝たふり」を決め込む、誠意のない人は......誰にどんな注意を受けても相手にしない。まあ、そんな意味だろう。「寝たふり」はあまり良い言葉ではない。

 1986年の中曽根康弘内閣時代、大昔の話だ。当時のメモを見ると「5月24日、内閣記者会会見 ナカソネ、解散なし!と約束」とある。ところが、である。6月2日、突如、臨時国会を召集。本会議を開かずに解散を断行した。この解散で衆参同日選挙。自民党は圧勝した。「内閣不信任決議なしの解散」だった。中曽根さんは後に「正月から(解散を)やろうと考えていた。解散は無理だ!と思わせたんだ。寝たふり、死んだふりをしたんだ」と笑った。これが俗に言う「寝たふり解散」「死んだふり解散」である。

 コレと比べれば、今回の高市さんは「堂々と」している。だからと言って「寝たふり」よりも〝犯罪〟に近い。「大義」がない!と大げさに言うつもりはない。支持率が高いうちに解散すれば勝てる!とごく簡単に思っただけだろう。その結果、1年3カ月でまた総選挙である。

 ご存じと思うが、解散に関する憲法の規定は二つ。一つは「69条解散」。衆院で内閣不信任決議案が可決、または内閣信任決議案が否決された時、内閣は「十日以内に衆院が解散されない限り、総辞職しなければならない」と定めている。

 もう一つは天皇の国事行為を定めた「7条解散」。「内閣の助言と承認により行う行為」の中に衆院解散が含まれている。この「7条解散」に関しては、意見が分かれる。「解散は首相の専権事項」という見方が多数ではあるが、もし天皇が「解散しない」と言われたら、どうなるのか?

 今回は、〝高市流〟の自己都合解散がミエミエ。解散・総選挙で、膨大な国民のカネが使われる。多くの人が、特に公務員が夜も眠れないほど働かされる。何人かが病気になる。当然だが、何人かの議員さんが「失業」する。

 しかもこの季節、豪雪地帯では投票所に行けない人も出るだろう。

 リスクいっぱいの「自分勝手な解散」を許していいのか?

 当方の取材では「早期解散を進言したのは今井尚哉内閣官房参与」らしい。「7条解散」は天皇の国事行為でありながら、これまで、陛下の判断はない。事実上、首相が、いや、一人の参与が「天皇」を利用して解散を断行した? 恐れ多いことだが......あえて言いたい!

 天皇は「政権の言いなり」ではないはずだ!

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まき・たろう
 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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