サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2026年2月15日号
インチキ電話を〝無視〟しているうちに...「孤独」になっちゃった!
loading...

牧太郎の青い空白い雲/1014 

 電話をしなくなった。

 というより、電話がかかってきても〝無視〟している。

 例のインチキ詐欺電話。自動音声で「お客様がご利用されている電話は2時間後に使えなくなります。ご不明な点がありましたら1番を押してお問い合わせください」。

 何のことだ? 思わず1番を押すと総務省やNTTなどを名乗る者が登場して「あなたの携帯電話が犯罪に使われています」。いくら何でも、ここまで来れば「インチキ詐欺電話」と気づく。こんな「出来の悪いインチキ電話」が1日に何度もかかる。多分100回ぐらいかければ、1人ぐらいひっかるだろう? と思っているのだろう。

 だから「無視」する。それはそれでよいのだが......。寒くて外出を我慢すると......人に会えない。家にいれば、電話を〝無視〟するから、一日中「人間サマと話すこと」がゼロ? 何となく寂しくなる。「孤独」っていうのはこんな感じなのか? 81歳だから「仕事場」がない。若い頃は会社に行くだけで「友達」が増えたのに......その何人かが逝った。めちゃ寂しい。

 音沙汰がない「昔の友達」に電話してみようか、という気持ちになった。古い友達が新しい仲間になるかもしれない。例えばその昔、競馬場に一緒に遊びに行った奴(やつ)。当時は大学の先生だったが、その後、都知事にまで出世した。俺みたいな悪友がいたら迷惑じゃないか? と知事就任以降、一度も連絡しなかった。ひょっとすると、奴も「暇」では? 古いメモ帳にある番号に電話すると、なかなかつながらない。やっとつながったら「マキさん? 知りませんね」。

「大井に一緒に行ったじゃないか?」

「......」

 まぁ「忘れた」と言われれば......仕方ないけど? ひょっとしてインチキ電話と思ったのかもしれないし。でも......昔の仲間の声を「忘れた」と言われれば......。これが「孤独」ということなのか? 暫(しばら)くして奴から電話。「マキタロウさん、思い出しました」。でも何か、空々しい感じで......。偉くなると「昔」は面倒臭いのだろう。

 女性ならと考えて、メモ帳を隅から隅まで探したが、オンナの友達なんて一人もいない。ただ一人、「○○さんの妻」というのがあった。○○さんは、任侠映画の大スター。生前、親しくしてもらった。連絡を取るには「妻の携帯」が必要だったのかもしれない。約20年前、○○さんの角刈りを担当した「西麻布の美容師」との連絡に、この携帯を使った記憶があった。思い切って「○○さんの妻」に電話した。「マキさん、久しぶりじゃないの」。元気だった。「主人が亡くなってから山梨に農場を開いたのよ。有機栽培。今度来てよ」

 嬉(うれ)しかった。

 寂しくなったら、流行(はや)りの「AIにご相談」するより、誰彼関係なく、電話しよう(笑)。

 ◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム