牧太郎の青い空白い雲/1011
「大したことはない。様子を見ましょう」と言われることがある。
例えば、「病院の診察室」。医師が「様子を見ましょう」と言うと、患者は「軽症で心配することはない」と言われた〝気分〟になる。「まずは安心!」と思うのだが......。実は、当の医師も「何でこんな症状が出たのか? その理由が分からない」というのが本音。とりあえず、「典型的な症状」が出るまで待つしかない!と思っているケースも多い。様子を見ているうちに重症化、それどころか「命」にかかわることもある。
例えば、「中学校」である。保護者が「いじめをする生徒がいる」と教師に訴えても「様子を見ましょう」で片付けられ、その結果、生徒同士の暴行事件が起きたりする。
コトの展開次第では「大したことはありません。様子を見ましょう」と判断するのは危険だ。
年末、数人の友達とちょっぴり酒を飲んだ時、彼らが揃(そろ)って「様子を見てやろうじゃないか?」と話す。「高市内閣」のことである。
日本初の女性首相だから、〝応援〟したい気持ちも分からないではないが......それでよいのか?
僕は友人らとは正反対で高市さんは何から何まで「不安」だ。「台湾有事は存立危機事態」という彼女の発言で、日中関係はそれこそ「危機」的状況。ハッキリ言って、なぜこんな言葉が出るのか?
日本は台湾と国交がない。大使館も置いていない。日本は1978年「日中平和友好条約」を締結しているから当然である。つまり、日本にとって中国は(台湾も同じだが)「重要なパートナー」だ。昨今、アメリカのトランプ大統領だって「中国寄り」を見せている......。中国が怒るのは当然。高市発言は「喧嘩(けんか)を売った」ようなものだ。
彼女の「防衛力強化」が危うい。
確かに、岸田文雄政権は防衛費を2027年度までに国内総生産(GDP)比2%まで増額させる方針を決定した。この時も、多くの日本人が「やり過ぎ」と批判したが、高市さんは所信表明演説で「これを2年前倒しで25年度中に2%へ引き上げる!」と表明した。補正予算で防衛費を大幅に増やし、当初予算を含む25年度の防衛費と関連費の総額は何と約11兆円になる。戦争当事国のようではないか?
高市さん周辺からは「国家情報局を作る」「中将や大佐を復活させる」「武器輸出を完全解禁する」とかいう〝勇ましい独自政策〟が次々に聞こえてくる。高市さんは「戦争」が大好きなのか?
「様子を見てみよう」と悠長なことを言っているうちに、日本は「戦う国」になってしまう。
高市内閣の支持率が異常に高い。それは日本人の多くが(特に若い層が)「様子を見てみよう」と思っているからだろう。お正月なのに「不吉な話」で恐縮だが、もしかして若者は「意味のない戦争」に駆り出されるぞ!
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◇まき・たろう
1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある