サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2020年8月16日号
志駕晃 作家・株式会社ニッポン放送プロジェクト常務取締役
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阿木燿子の艶もたけなわ/313

小説家としてのデビュー作『スマホを落としただけなのに』がいきなり大ヒットとなった志駕さん。本職は、「ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポン」「テリー伊藤のってけラジオ」などの人気番組も担当してきた、ニッポン放送の名物ラジオマン。多忙な日々を送りながら、今もサラリーマンと小説家の二足の草鞋(わらじ)を履き続ける意味とは!?

小説は誰にでも書けるんです。ただ、書き切る人が少ない。

「会社で書いてるんじゃないか」と御社の社長さんが仰ってましたが(笑)。

基本的には、書いてません(笑)

阿木 私が志駕さんと初めて名刺を交換させて頂いたのは3年前。当時はもちろん本名で、ニッポン放送のエンターテインメント開発局長でいらっしゃって。主人(宇崎竜童氏)のコンサートでは、いろいろお世話になりました。

志駕 いえいえ、そんな恐縮です(笑)。

阿木 でも私、つい最近まで、志駕さんが小説を書いていらっしゃることを知らなくて。現在、志駕さんが在籍していらっしゃるニッポン放送プロジェクトに先日、伺った折、上司の方からお話をお聞きして、もうびっくり。何とあの大ヒットシリーズ「スマホを落としただけなのに」(以下「スマホ」)の原作者でいらしたとは。大変、お見それいたしました(笑)。

志駕 僕の口からあえて言うのもおかしいので。

阿木 北川景子さん主演で映画化されて、こちらの方も大ヒット。私、公開時に観(み)てみたいと思いつつ、観損ねていたんですが、今回、DVDで拝見して、想像以上に怖くて、面白かったです。

志駕 ありがとうございます。

阿木 今、志駕さんはサラリーマンと作家の二足の草鞋をお履きになっていますが、ニッポン放送のみなさんには「スマホ」のことをいつお話しになったんですか?

志駕 割と早い段階でしたね。ニッポン放送は僕みたいなお調子者は好きなので、喜んでくれました。

阿木 確かに、調子が良い人が多い(笑)。

志駕 ただ最初は「おお、凄(すご)いじゃん」なんて言ってたんですけど、どんどん話が大きくなって、「えっ、お前の本、そんなに売れてんの」となり、そのうち「映画になるんだ」って驚いてました。

阿木 志駕さんはもともと明治大の漫画研究会でしたよね。小説はいつ頃から書き始めたんですか?

志駕 本腰を入れたのは50歳の手前ぐらいからですね。管理職になってクリエーティブな現場から長年離れたら、いっそ個人的に何か作りたいという欲望が募っていた感じですね。

阿木 管理職とモノ作りでは、発想の飛ばし方が違いますものね。

志駕 よく言うじゃないですか。どんな人でも生涯に1冊は本が書けるって。それで僕も書いてみようかなという気になって。

阿木 でも書きたい人は沢山(たくさん)居ても、実際に書ける人はそう居ない。

志駕 「スマホ」は僕が書いた初めての長編なんです。ちょっとやってみたら、「意外に書けるんだ、小説」って思いました。

阿木 じゃ、特別に文章修業とかを、なさったわけではない?

志駕 そうですね。ただ、漫画を描いていたことと、ラジオドラマを作っていたのが良かったのかなと。ラジオドラマを作る感覚と漫画を描く感覚をプラスすると、小説は割に書ける感じですね。

阿木 それで場面展開にテンポがあって、シーンごとの情景が浮かぶんですね。

志駕 僕の小説って、ドラマの原作みたいな感じだと思うんです。科白(せりふ)と場面転換で持たせている。

阿木 次はどうなるかと興味が湧いて、とても読みやすかったです。

志駕 普通の小説は地の文章が多いんです。でも、そうするとどうしてもテンポが落ちるので、なるべく省略して、会話と展開で進めるように工夫しています。

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