サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2020年7月19日号
相川圭子 ヨガ指導者
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阿木燿子の艶もたけなわ/309

まだ日本でヨガというものがよく知られていない1960年代からヨガや瞑想を実践し、さらには奥義を極めるために、ヒマラヤでの過酷な修行に挑んだ相川さん。命がけの荒行で達した境地を、多くの人にわかりやすく説く言葉が、広く支持されています。阿木さんも、日々の心身の疲れを癒やす相川さんの力強い言葉に励まされていました。

◇今人類に必要なのは、感謝の心と、〝足るを知る〟ことですね。

◇「悟り」って、とても重くて深い言葉に思えるのですが。

◇要は「自分は一体誰なのか」ということ。本当の自分に気づいて実感することです。

阿木 相川さんは世界で2人しか居ない、ヒマラヤ秘教の奥義を極められた大聖者。今日はあえてヨグマタ(宇宙の母という意味)と呼ばせて頂きたいのですが。いきなり俗な話で恐縮ですが、ヨグマタの今日のお召し物、素敵(すてき)ですね。着心地がとても良さそうです。

相川 あ、これね。インドは縫い賃が安いんですよ。1着、5000円とかね(笑)。

阿木 生地はインドシルクですよね。見るからに軽やかで。ヨグマタ御自身も軽やかで、大聖者なのに、とても親しみやすい。

相川 ヒマラヤ秘教の御修行をしていると、感情や心が浄化されて重いものを引き摺(ず)らないので、身が軽くなるんです。

阿木 私達はいろいろなものを引き摺って生きてますよね。それで大抵は身動きが取れなくなる。

相川 そう、ストレスとか、しがらみとかね。思い切ってそれらを全部捨てて、自由になる。それも表層的な部分だけではなく、心の深い部分までね。

阿木 うーん、私、捨てるのが苦手で(笑)。

相川 瞑想(めいそう)をしていても、みなさん、良い人になりたいとか、成長したいとか思うわけですけど、それで結局、こだわりの人になってゆく。やればやるほど「ねばならない」が出ちゃうのね。

阿木 落とし穴ですよね。真面目な人ほど、はまりそう。

相川 今は情報が有り過ぎて、頭でっかちになっているから、まずは思い込みを捨てないとね。

阿木 思い込みって、年と共に強くなるから、自戒せねば(笑)。

相川 そう、無心にならないと。

阿木 それが一番、難しい。無心になろうと思うと、逆に雑念だらけになって。ヨグマタの御著書『「信じる力」が幸運を呼ぶ』にも書かれてありましたが、「瞑想とは心をコントロールしようとする心をコントロールすること」って。

相川 「心を越えること」が大切なんです。

阿木 またまた、ハードルの高いことを仰(おっしゃ)って(笑)。

相川 心は磁石みたいなんです。似たものをくっつける性質がある。

阿木 「類は友を呼ぶ」ってやつですね。

相川 だから瞑想する時は、守ってくれるものが無いとね。マインドが、大いなる存在につながっていないと、あらぬ方向に持っていかれて、危険なんです。

阿木 〝魔境に入る〟って言葉が有りますよね。瞑想には様々(さまざま)な段階と、側面があると思うのですが。

相川 まず第1段階としては、心のことが見えないと。瞑想していくうちに、「自分は良い人だと思っていたけど、そうでもない」とかが分かってくる。

阿木 意外と嫉妬深いとか(笑)。

相川 私、若い頃、他人を羨む気持ち自体は、とくに悪いと思ってなかったんです。肯定的に見れば憧れという言葉になるし。でも同じ感情が否定的な表現だと、〝妬み〟になる。人間はどうしても、他人と比較をしますよね。そこで〝足るを知る〟ということが大事になってくるんです。

阿木 これも「言うは易(やす)し行うは難し」。で、どうしたら良いんでしょう?

相川 ヒマラヤ秘教では静かに座って、自分の内側を見るということをやるんです。そういう内観の時間を持つと、世の中が新型コロナで大騒ぎをしていても、心は平穏でいられるんです。

阿木 今年は世界中がコロナで大変ですが、ヨグマタはこの現象をどう捉えていらっしゃいますか?

相川 もともと人間は鼻と口から、空気以外にもいろいろ吸い込んでますよね。その中にはコロナのようなウイルスもいる。マイナスなものが表面に出てくるということは、地球がバランスを欠いている証拠なんです。人の心が悪意や憎悪に満たされ、地球への破壊行為が高じると、不調和が生まれるわけで。人間はこのコロナをきっかけに、変わらなくてはいけない、というシグナルですよね。

阿木 ここまでコロナに翻弄(ほんろう)されると、SF小説ではありませんが、コロナはひとつの生命体で、独自の意思を持っているのでは、という気さえしてきますが。

相川 ただ、地球上のすべての存在は、生きる権利があるんです。

阿木 確かに。人間のためだけの地球ではありませんものね。

相川 そう、すべて進化しないと生きられない。良い方向にも進化するけど、破壊的な進化もあるということですね。

阿木 人類はこのコロナ禍から、何を学べば良いんでしょう?

相川 私はヒマラヤの教えを伝えているので、調和を図るということが大事だと思ってるんです。人類は余計なことをあまりにやり過ぎたので、地球に対して、もっと尊敬と愛を持って接しないとね。大事なのは感謝と、先ほども言った〝足るを知る〟ことですよね。

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