サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2020年7月12日号
西川八一行 西川株式会社代表取締役社長
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阿木燿子の艶もたけなわ/308

450年を超える歴史を持つ、日本屈指の老舗寝具メーカーの西川。この名門企業を38歳の若さ、しかも創業家出身でない入り婿の立場で引き継ぎ、新時代へと牽引してきたのが、現社長の八一行氏です。人生の1/3を占める睡眠の重要性、そして今の時代にこそ社会全体のために生きるという、西川家代々の家訓の意味をお話しいただきました。

◇眠っている間こそが、人間らしさを築く時間なんです。

◇婿に入る際には、実父の佐々淳行さんは反対なさらなかったんですか?

◇三男の私は他所で奉公すべしという感じでとくに問題はありませんでしたね。

阿木 先日はありがとうございました。御社でマットレスを買わせて頂いて、目覚めがとても良くなりました。長年の腰の痛みが大分、軽減された感じです。

西川 そうですか。それは良かった。でも、ずいぶん短期間で(笑)。

阿木 私、体が単純なもので(笑)。でも、ちょっと驚きました。こちらでは、マットレスを購入するに当たって、私の体形とか寝返りを打った時の状態とか、いろいろ調べて下さるんですね。

西川 当社では30年以上前に、日本睡眠科学研究所というのを設けておりまして。様々(さまざま)な角度から睡眠を研究し、商品の開発やサービスを提案させて頂いてるんです。

阿木 私が購入させて頂いたのは[エアー]というマットレスですが、硬さが丁度(ちょうど)良いですね。硬過ぎず軟らか過ぎずで。これはお聞きしたところ、ブリヂストンの技術が使われているとか。

西川 このマットレスは4層構造になっているんですが、層によって硬さが異なるんです。それを組み合わせて作るということは、結構難しいんです。

阿木 このようなマットレスを作ろうと思われたのは、西川社長のアイデア?

西川 当社のマットレスを作る技術は以前から秀でていたのですが、もともと当社マットレスはコンセプトが地味で、いわゆる和布団のためでしたから、そこをどうやったらインパクトの強い商品にできるか、試行錯誤の一環として相談したという感じですね。

阿木 [エアー]が大ヒットして、良かったですね。じゃなかったら社長の座に座っていても、居心地が悪かったかも(笑)。

西川 というより、違う椅子になっていたと思います(笑)。

阿木 私、マットレスと一緒に、枕も購入したんですが、枕に関しても、私にピッタリの専用枕を作って下さって。

西川 技術的には最新のテクノロジーを使っていますが、最後は人と人というか、アナログ感覚であり、プロの技術で合わせさせて頂いています。

阿木 人間って、年と共に体形や体質が変わるのに、マットレスに関して言うと、なかなか買い替えませんよね。よほどのことがない限り、使い続ける。

西川 もちろん長持ちするようには作っていますが、何せ、人の体の変化の方が早いもので。

阿木 悲しいかな、老化および、劣化(笑)。

西川 いやいや、変化です(笑)。年齢と共に、筋肉や骨の量も変わってゆくので。そういう意味では眼鏡と同じですよね。度が合わなくなったらフレームを残し、レンズは変えた方が良い。

阿木 今年に入ってから、私も外出自粛をしていたので、断捨離を決意したんですが、嫁入り道具のお布団一式が、どうしても捨てられなくて。

西川 そういう方は大勢いらっしゃいます。若いうちは寝具にお金をかけられないので、親御さんが立派なお布団を揃(そろ)える、みたいな習慣が有りましたよね。その親御さんの気持ちを思うとね。

阿木 最近、急速に日本人の睡眠に対する意識改革が進んでいるように思うんですが。

西川 そうですね。今年は新型コロナウイルスの世界的流行で、免疫機能の重要性が言われていますよね。ウイルスに感染せずに居ることが、自分や家族の幸せにつながるといった認識を、多くの方が持つようになった。そこで睡眠の果たす役割が注目されるようになった感じですね。

阿木 私、以前、この対談に出て頂いた根来(ねごろ)秀行先生の、睡眠に関する御著書を何冊か読ませて頂き、免疫機能を上げるのに、睡眠がどれほど大切かということを知ったのですが、もう少し早くに読んでいたらなって。若い頃の私は、目一杯仕事をして、寝ないで遊ぶといった感じでしたから。そのツケが今頃回ってきている。

西川 不思議なもので、体調が良い時には、寝ることに無頓着な方が多いんです。それが何か問題が起こると、寝具の大切さに気付かれる。もちろん、それも有り難いことなんですが、我々としては、明日を輝かせるための寝具というのを前面に押し出したいというのもありまして、サッカーの三浦知良さんや、メジャーリーガーの田中将大さんや大谷翔平さんなど、数多くのアスリートの方々を、眠りの面からサポートさせて頂いているんです。

阿木 本来でしたら今年、沢山(たくさん)のオリンピック選手をバックアップなさるはずだったんですよね。

西川 オリンピック自体は開催が延びましたけど、メンタルも含めて、出来る限りのサポートをしたいと思っています。

阿木 私、先日、お話を伺って驚いたのですが、御社の創業は何と、戦国時代にまで遡(さかのぼ)るのだとか?

西川 1566(永禄9)年です。豊臣秀吉の時代ですから、450年以上になります。

阿木 西川社長は15代目。もともとは西川姓ではないんですよね。

西川 入り婿ですので。旧姓は佐々(さっさ)と言いまして、佐々淳行(元内閣安全保障室長)が僕の実の父親です。

阿木 私、若い頃、お父様とも面識がありまして。お父様はもともと警察官僚でいらして、連合赤軍が起こした、「浅間山荘事件」では、現場を取り仕切っていらっしゃった。西川家に婿に入ると仰(おっしゃ)った時、お父様は反対なさらなかったんですか?

西川 父は、佐々家は武士の家系なので、長男が家督を継いで、次男は長男に何かあった時のバックアップ、三男以降は他所(よそ)へ行って奉公すべしという考えでした。なので、とくに問題はありませんでしたね。

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