サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2020年4月26日号
北條元治 医師・セルバンク代表取締役
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阿木燿子の艶もたけなわ/298

テレビや雑誌などでは身近な健康のお話をされていることが多い北條さんですが、実は再生医療の研究を手がけ、いくつもの特許を持つ、バリバリの研究者。そして医療をめぐる医学界や行政の〝不都合な真実〟に対峙する、異色の医師でもあります。毎日欠かさないというお酒の話題を入り口に、硬軟取り交ぜた、いろんなお話をうかがいました。

◇私達研究者は「iPSブーム」を冷めた目で見ていたんです。

◇クローン人間まで作り出す医療の進歩を、私達はもっと慎重に考えるべきでは。

◇「なんでもやっちゃえ」とならないよう、きちんと制御していく必要がありますね。

阿木 お昼時にお邪魔して、申し訳ありません。先生、昼食は?

北條 お気遣いなく。私、食事は適当なんです。

阿木 先生はお医者さんでいらっしゃいますが、御自身の健康に留意なさる方じゃない?

北條 そうですね。休肝日を設けずに、酒を飲んでますしね。

阿木 え、毎日ですか?

北條 この10年くらい、そんな感じですね。でも肝臓の数値は全然問題ないです。

阿木 じゃあ、飲み方がお上手なんですね。

北條 いやあ、そんなことも。昔は二日酔いしてましたが、今は朝起きても酔っ払ってることが(笑)。

阿木 先生の場合、肝臓が駄目になっても、御専門の再生医療で復元できたりは?

北條 肝臓は非常に修復能力が高い臓器ですが、ある程度以上、やられると、さすがに難しいです。

阿木 何事もほどほどってことですね。それにしても昨今は、再生医療という言葉が独り歩きしている感がありますが。まるで魔法のように、どんな臓器でも蘇(よみがえ)らせるみたいな。

北條 その辺は我々のような医療関係者と、一般の方々の間には、認識に乖離(かいり)がありまして。何でも元通りになる訳ではないんです。

阿木 友人と冗談っぽく話すことがあるんですが、例えば体のどこかが悪くなったら、再生医療で、新しいのと取り替えてもらえば良いねって。

北條 まあ、今、阿木さんが仰(おっしゃ)られたようなことは、時間軸にこだわらなければ、いずれ普及するでしょうけど、私が生きている間はちょっと難しいかなと。

阿木 ええ? 先生の年齢でもですか? じゃ、私の年ではとうてい無理ですね。

北條 私が申し上げている〝普及〟というのは、コストパフォーマンスの意味も含めてなんです。もちろん現在も、心臓の心筋細胞を培養したり、不妊治療のために子宮内膜に培養細胞を提供するといったことをやっていますが、実際にそれらが普及していくとなると、コスパが良くないと広がってゆかないんです。今はまだコストの割に、結果が従来の医療より劣ることが少なくないので、そこがネックになっています。

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