阿木燿子の艶もたけなわ/285
歌手として、またお茶の間で愛されるタレントとして、長年活躍を続ける、美川憲一さん。複雑な生い立ちや人生の浮き沈みも、「それがあるから、今の私があるんです」と泰然と語る姿には、風雪に耐えてなお根を伸ばすがごとき、強くしなやかなお人柄がうかがえました。普段はなかなか聞けない、美川さんならではの人生哲学に注目です。
◇本当は私、全然「ご意見番」なんかじゃないんですよ。
◇コンサートの握手会では、お客様が美川さんに人生相談をなさるそうですね。
◇だから、お一人お一人がつい長くなって、列の後ろから「まだですか?」って(笑)。
阿木 私、今日、美川さんがどんなファッションでいらっしゃるのか、楽しみにしていたんです。
美川 ごめんなさい、適当で(笑)。そこら辺にあったものを、パッと着て来ちゃって。
阿木 それでも素敵(すてき)です。ステージ衣装もゴージャス。去年の「ドラマチックシャンソン」のDVDを拝見しましたけど、そのきらびやかさに、うっとりしました。
美川 あれはもう、20年やってるんですよ。
阿木 20年間は長いですね。
美川 「柳ヶ瀬ブルース」がヒットした頃、淡谷のり子さんと対談させて頂いたら、「その低い声は流行歌より、シャンソンを歌った方がいいわよ」と仰(おっしゃ)って頂いたのが、きっかけなんです。
阿木 まるで、お告げみたい(笑)。
美川 「あなたは若いからまだ分からないだろうけど、シャンソンを歌って、歳を重ねていくと、いつまでも綺麗(きれい)でいられるわよ」という、その淡谷さんの一言が忘れられなくて。
阿木 それにしても、豪華な衣装を何度も何度も着替えられて。あのー、採算は合うんでしょうか?(笑)。
美川 そこは多くは言いませんけど(笑)、衣装に合わせて用意する宝石、あれが実は高いのよ。借金して、宝石を買っているくらいだから。
阿木 じゃあ、「紅白」で付けてらした、凄(すご)く目立つ大きな石も?
美川 全部、本物。
阿木 もしかしたら、億に届く世界?
美川 もちろん。
阿木 ええ......凄い。