サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2019年12月22日号
鈴木敏夫 スタジオジブリ代表取締役 プロデューサー
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阿木燿子の艶もたけなわ/281

「となりのトトロ」「もののけ姫」――数々の名作で知られ、今や日本を代表するアニメーション制作会社であるスタジオジブリ。高畑勲・宮崎駿監督とともに、黎明期から同社を支えてきたのが鈴木敏夫プロデューサーです。元々は週刊誌記者だった鈴木さん。記者時代のエピソードや、ジブリのものづくり哲学など、たっぷり伺いました。

◇僕、生まれてからこの方、胃薬って飲んだことがないんです。

◇ジブリって、作品以外でお金を儲けようという気があまりないようで。

◇ジブリで作ってきた作品のパート2ってないんです。「もののけ姫Ⅱ」とかね。

阿木 この「れんが屋」って、鈴木さんの個人的な事務所ですよね。とても居心地がいいですね。

鈴木 そうでしょう。毎晩のように誰か来て、勝手に酒を飲んだりしています。

阿木 ここで、みなさんでアイデアを出し合うとか?

鈴木 そういうこともありますし、一緒に映画を観たりとかね。

阿木 私、こういうサロン的な空間を持つのが夢なんです。でももしそうなっても、アニメや漫画の話には加われないな。子供の頃、漫画を読むと親から怒られたので、漫画を読む習慣がなくて。

鈴木 僕のほうが年は下ですが、僕もそうでしたよ。

阿木 そんな私がこの3日間で、スタジオジブリの作品を4本半、観たんです。

鈴木 お疲れ様でした(笑)。

阿木 観た順番で言うと「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」「魔女の宅急便」「となりのトトロ」そして「かぐや姫の物語」が半分。でも、びっくりしました。

鈴木 何がですか?

阿木 作品の壮大さと、完成度の高さに。最初はこの対談のためだったんですが、途中からのめり込んでしまって。

鈴木 それは嬉(うれ)しいです。そういえば、ご主人(宇崎竜童氏)にもジブリ作品に出て頂いたことがあるんです。

阿木 高畑勲監督の「かぐや姫の物語」ですよね。主人、収録から帰って驚いていました。てっきり画面の口に合わせて、科白(せりふ)を言うのかと思ったら、高畑監督から紙を手渡されて、「これを喋(しゃべ)ってください」って。

鈴木 日本は絵ができて、それに声を当てますよね。だから〝アテレコ〟と言うんですけど、これをやっているのは日本だけなんです。アメリカなんかは、先に声を録(と)るんです。そして、それに合わせて絵を描くんです。

阿木 絵が後なんですか?

鈴木 ディズニーもそうで、そのやり方をプレスコと言います。

阿木 どうして日本は、アテレコに?

鈴木 声に合わせて絵を描くと、時間がかかるんです。ただ高畑さんは最後まで、プレスコ方式でしたね。

阿木 高畑さんと宮崎さんは、もともと師弟関係なんですよね。

鈴木 高畑さんが5歳上で、「東映動画」(現・東映アニメーション)にいた頃、高畑さんが宮さん(宮崎駿)を抜擢(ばってき)したんです。

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