サンデー毎日

対談
イチオシ
2019年9月29日号
佐渡島庸平 コルク代表取締役
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阿木燿子の艶もたけなわ/269

講談社に在籍し、『ドラゴン桜』『働きマン』など、誰もが知るヒット漫画の編集を担当した佐渡島庸平さん。33歳の時に会社を辞め、作家のエージェント会社を設立しました。自らが尊敬する作家の作品を後世に残すことにかけて、編集者時代から一貫した情熱を抱いています。現在の出版業界をどのように見ているのか伺いました。

◇「100年後も読み続けられる作品を」というスタンスで作っています。

◇佐渡島さんご自身は巨万の富を得たい、とはお思いにならない?

◇大金を得たら、そのお金を作家に配って成長してもらい、それをまた循環させたい。

阿木 佐渡島さんは作家やクリエイターのエージェント会社「コルク」の創立者でいらっしゃいますが、こうしてお目にかかると社長さんというより、どこかの大学院生さんみたいで。

佐渡島 でも、僕、もう40歳のおっさんなんです。

阿木 いえいえ、まだ40歳。「コルク」を立ち上げて、何年になりますか?

佐渡島 起業が2012年ですから、7年ですね。

阿木 その割に余分な貫禄がついていなくて、本当に若々しい。

佐渡島 まだベンチャーなもので。

阿木 以前、このページに漫画家の羽賀翔一さんに来て頂いたんですが(2018年1月28日号)、対談中、佐渡島さんのお話が出て。その時は今ひとつ、佐渡島さんのお立場が分からなくて。でも今回、資料を読ませて頂いて、理解しました。要するに、作家さん達のエージェント(代理業)なんですね。

佐渡島 芸能事務所のイメージに近いものがあります。ただ芸能事務所だと、所属しているタレントさんのスケジュール調整やブッキングが、業務のメインになりますよね。漫画家や小説家の場合、著作権があるので、その著作物にどれだけ働いてもらえるかも重要になるんです。あとは作家の次回作の方向性とか、環境づくりのサポートなどですね。

阿木 ということは過去の作品を掘り起こして、どうしたらもう一度、売ることができるかを考えていらっしゃるんですよね。それ、作詞家にすると、凄(すご)く羨ましいです。こんなに長く仕事をしていると、過去に書いた作品が山のようにあるんですが、大ヒットしない限り、ほとんどが忘れ去られた状態で。時折、「あの曲、もう二度と日の目を見ることはないだろうな」と思うと、切なくなることがあるんです。そんな昔の曲をもう一度、発掘してくださる方がいたら、どんなにうれしいか。

佐渡島 日本ではクリエイターの活動をサポートする事務所がほぼなかったために、塩漬けになっている名作が少なくない。それって、凄くもったいないことだと思うんです。

阿木 日本人は新しいもの好きですからね。どんなに良いものでも古くなると見向きもしない。女性も一緒です。年を取ったというだけで、そっぽを向かれる(笑)。過去の作品を再プッシュして頂けるなんて、「コルク」に所属している作家さん達は、幸せですね。

佐渡島 そう思ってもらえるとうれしいんですが。今、出版界は大きな転換期で、それにどう対応してゆくか各社、手探りの状態なんです。

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