サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2019年7月28日号
前川喜平 元文部科学事務次官
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阿木燿子の艶もたけなわ/261

「あったことをなかったことにはできない」――加計学園問題で総理の意向が記された文書の存在を証言、政権と真っ向から対峙し、世の注目を集めた前川喜平さん。38年間の役人生活では、組織に表向きは従い、内心で背く術を実践していたといいます。公務員世界の内側や、その中でご自身が重ねていた努力について語って頂きました。

◇「右向け右」と言われると、90度向かず60度で止めるようにしていた。

◇「面従腹背」は、日常会話では、あまり出てこない熟語だと思うのですが?

◇従ったと見せかけて、腹の中で違うことを考えているのは、役人世界でよくあること。

阿木 去年、前川さんが上梓(じょうし)なさった『面従腹背(めんじゅうふくはい)』を拝読いたしました。まず印象としては凄(すご)く漢字が多いなと。官僚時代のことを書いていらっしゃるので、肩書だけ読んでも漢字だらけ(笑)。

前川 私、こういう役職になったことがあるんですよ。「文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長」。いや、今から考えると、とんでもなく長い。

阿木 まるで落語の「寿限無(じゅげむ)」の世界(笑)。

前川 でも、その時も僕の下に、室長とかいるわけですね。そうすると、もっと漢字が増える。

阿木 じゃ、会合に出席したら、司会の方は、その長い肩書を読み上げなくてはいけない。

前川 そうですね。「文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室長」って(笑)。

阿木 凄い字数。またご著書のタイトルも四文字熟語。私、この「面従腹背」の意味を知らなくて。日常会話では、あまり出てこない熟語だと思うのですが?

前川 そうですか? 僕は比較的、よく使っていましたけど。

阿木 業界用語?(笑)。

前川 従ったと見せかけて、腹の中で違うことを考えているのは、役人の世界でよくあることですからね。おそらく政治家も同じでしょう。騙(だま)し合いをする場所でしか使わない言葉です。

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