サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2025年6月15日号
「闇米の昔」を勉強しない2世議員が農水相になって何ができる?
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牧太郎の青い空白い雲/988

「闇米」をご存じだろうか?

 第二次世界大戦後、食糧不足が深刻で、政府は米の価格や流通を徹底的に統制したが......。やっぱり日本人。白米が食べたい。闇市では統制価格で売買されるはずの米が高値で売買。「闇米」である。

 東京・柳橋で料亭をしていた実家は幾つかのルートを使って「闇米」を仕入れていたが、その価格はベラボーに高い。統制価格の2倍、3倍はごく普通。49倍まではね上がる時期もあったらしい。

 当時、多くの家庭では白米の代わりに玄米や芋類を食べていたので、料亭の〝売り〟の一つは「真っ白い米」だった。それでも......1944(昭和19)年生まれの当方に「商売用の米」が回ってくるのは稀(まれ)で、子ども心に「お百姓さんは幸せなんだ」と思っていた。

 1967年、毎日新聞社に入社、米どころの新潟支局に赴任して「自主流通米」騒動に遭遇した。政府が食糧管理制度の下でも、一部の米を政府を通さずに流通させることを認めたのだ。この頃、豊作が続くと農家が損をする!という時代。食糧管理特別会計もパンクしそうな状態で、「自主流通米制度」はこの赤字を軽減する目的だった。政府自民党はこれを機に、過剰の米生産量を消費量に合わせることで米価を維持する「減反政策」を続ける。「闇米」の合法化? だと反対する農家も多かった。

 1969年産米から「自主流通米」が店頭に並んだが、これは日本で初めて「米流通」に市場原理が導入された!との見方もある。

 あれから50年以上経(た)って、今「米高騰」が我々を苦しめている。55000円前後? 1年前の価格と比べると2倍以上。「闇米」みたいな上げ幅ではないか?

 こんな折、江藤拓農水相(辞任)が「私はコメを買ったことはありません。支援者の方々がたくさんくださるので、売るほどある」と喋(しゃべ)ってしまった。この人、2世議員で父親は小作農出身で農協に勤めていた。だから息子もバリバリの農水族。小さい頃から米はもらうもの!と思っているのだろう。

 ピンチヒッターで農水相となった小泉進次郎さんも2世議員。記者団に「お米をどれくらい買っているのか?」と聞かれ「いろんなお米を買いますね。息子も娘もまだ小さいので、時短であげなきゃというときは、パックご飯も買います」と意味不明の答え。多分、この2世議員も「貰(もら)った米」を食べているのでは? 「販売価格が下がらない要因である競争入札を改め、任意の業者と交わす随意契約で備蓄米を売り渡していく」とブチ上げたが......。問題は減反政策を続けてよいのか? ではあるまいか。

 農家に補助金を出し、田んぼを休ませ、結果として農家はドンドン減ってしまった。それでよいのか? 「闇米の昔」を勉強しない世襲議員が農水相になって何ができるのか? 甚だ疑問である。

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