サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2019年6月 2日号
小林さやか 大学院生
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阿木燿子の艶もたけなわ/253

2015年、有村架純さん主演の映画が公開され、世の注目を集めた「ビリギャル」。ゲストの小林さやかさんは作品誕生のきっかけとなった「ビリギャル」ご本人です。大学卒業以降、どんな人生を送ってきたのか?高校時代の自分を、今はどう捉えているのか?知られざる「もうひとつのビリギャル物語」、始まります!

◇「ビリギャルのモデルです」というだけでは、何も変わらないと思っ た。

◇「明治大学は滑り止め」と本にありました。私、明大卒なんですけど(笑)。

◇大学を学校名で選んだというより、慶應が櫻井翔君で、明大が山Pだったから。

小林 リップクリーム塗ったほうがいいかしら。お昼にトンカツ食べてきたから。

阿木 大丈夫ですよ、写真、モノクロだから。

小林 でも一応、塗っておこう。

阿木 まァ、そうですよね、女子はね。でも、女子っていくつまでなのかしら?

小林 阿木さん、まだ入ります。

阿木 いえいえ、いくらなんでも。でも、気を使ってくださって、ありがとう。今、さやかさんは大学院に通っていらっしゃるんですよね。あの、こう言っては失礼なんですけど、お勉強嫌いのさやかさんが、慶應大学に入るまでの過程を描いた、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』という大変長いタイトルの本が120万部の大ヒットを記録したのが2013年。本でちょっと気になったのは、「明治大学は滑り止め」と書いてあったこと。私、明大卒なんですけど(笑)。

小林 ごめんなさい。私、大学を学校名で選んだというより、慶應が櫻井翔君で、明大が山Pだったから。

阿木 ああ、山下智久さんね。イケメンじゃないですか。

小林 ただ当時は櫻井翔さんみたいなカッコいい男の子が慶應にはワンサカいるような気がして。自分で「慶應、慶應」って言ってたら、ほら、言霊(ことだま)ってあるじゃないですか。どうしても慶應に行きたくなっちゃって。

阿木 本当にそんな軽い動機で大学を選んだの?

小林 そうです、最初は。

阿木 はっきり言い切りましたね(笑)。

小林 私、名古屋から一歩も出たことがなかったし、東大はきっと牛乳瓶の底みたいな眼鏡を掛けた男子学生しかいないんだろうなと思って。慶應に関しては「櫻井君が行ってるところだ」って、その程度の知識しかなくて。

阿木 極端に情報が少ないですね(笑)。

小林 そうなんです。イケメンがいそうというだけで。

阿木 でも、この本の著者でもあり、さやかさんの学習指導をなさった坪田信貴先生は、ルックス的には、さやかさんの好みのタイプじゃなさそうだけど。

小林 まったく(笑)。坪田先生って、信じられなくらい脚が短いんです。あッ、言っちゃった! 自分でも先生、言ってるんですけど、人に言われたらムカつくかもしれないですね。

阿木 それでも出合い頭に「あ、この人は信用できるな」と?

小林 そう思いました。なんでかというと、学校の先生達は私に対して「お前、ピアスの穴を開けてるじゃねえか」とか、「もっとスカートを下ろせ」とか、基本的に否定から入るというか。だけど坪田先生は、派手な格好で化粧もバッチリ決めて塾に行っても、「さやかちゃん、そのまつげ、ひじきみたいだけど、どうなってんの?」って聞いてくるんです。

阿木 ひじきみたいって?

小林 ほら、まつげが太くなり過ぎちゃって。だから私、「あ、これね、マスカラを1時間、塗り続けて作ってんだよ」って。そうすると先生が「さやかちゃんは、凄(すご)い時間の使い方をしてるね」って。

阿木 先生にしたら毎回、カルチャーショック。

小林 超ミニにヘソ出ししてると、「お腹(なか)、冷えない?」とかね。

阿木 ずいぶんユニークな先生!

小林 坪田先生は教える側というより、私みたいな者にも対等に接してくれる。そういう大人って、あまり出会わないじゃないですか。

阿木 さやかさんが凄くラッキーなのは、お母様にしろ坪田先生にしろ、滅多(めった)に居ない大人に巡り合えたことですよね。さやかさんのお母さんって、さやかさんのやることすべてに肯定的なんだとか。

小林 私、ビリギャルの話の一番の主役はお母さんだと思ってるんです。もちろん坪田先生に出会えたのは、とてもラッキーなことだけど、私以外にも先生と縁があった子供はたくさんいるんです。でも、誰もが慶應に入っているわけじゃないし、途中で塾を辞めちゃう子もいっぱいいたし。私、高2から塾に通い始めたんですけど、最初に小学校4年生のドリルを手渡されたんです。これ、普通の親が見たら「何なの、この塾」ってなると思うんです。ほとんどのお母さんは、科目の平均点を上げてほしくて、塾に子供を通わせているので、怒りますよね。

阿木 確かに、小学4年生のドリルではね(笑)。

小林 ウチのお母さんは「別に成績を上げるために通っているんじゃなくて、さやかちゃんが塾に行くことでワクワクしているなら、それですべて良し」みたいな感じで。私が勉強していると「何やってるの?」と聞くから「小学生のドリル」とか答えると、「さやかちゃん、凄いね」って言ってくれて。

阿木 私、「ビリギャル」の中で一番驚いたのは、さやかさんが聖徳太子のことを「せいとくたこ」と読んだって。それで、「この子可哀そうな子なんでしょう」と言ったというエピソード。

小林 そう、子が付くから、太った女の子かなって思ってた。

阿木 凄くユニークな発想。

小林 私、今はそう思ってないけど、あの頃は過去の歴史は、私にはまったく関係ないって。だから日本史なんか勉強して、みんなどうする気なんだろうと。本気で思ってましたね。

阿木 でも、さやかさんは中学受験を経験しているんでしょう?

小林 その時の頑張りが、大学受験で役立ったのかもしれません。

阿木 で、さらに驚くのは、受かるとその日から、また何もしなくなっちゃう。

小林 だって、勉強する意味がもうないから。

阿木 それは大学も同じだった?

小林 そう、もう勉強は卒業、って感じ。

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