サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2019年5月19日号
毎熊克哉 俳優
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阿木燿子の艶もたけなわ/251

映画「ケンとカズ」で新人賞を相次いで受賞。裏社会を生きる若者からSMの"ご主人様"まで、幅広くこなす毎熊克哉さんは、今後の活躍に期待が寄せられる若手俳優の一人です。5月公開の映画「轢き逃げ」では、その鋭い眼光を生かして、熱血刑事役に挑戦。撮影現場での裏話から恋愛の失敗談まで、知られざるエピソードが満載です!

◇どのスペシャリストを目指すかと聞かれたら、やはり映画ですね。

◇毎熊さんは"遅咲きの大型新人"という言われ方をしていますが、それについて は?

◇もっと苦労されている方がいらっしゃるので、僕で遅咲きでは、失礼じゃないか と。

阿木 "まいぐま"さんとお呼びするんですよね?珍しいお名前ですね。

毎熊 九州のほうには結構、居るみたいなんですが、僕は会ったことがなくて。

阿木 こういうお仕事をしていると珍しい名前は、有利ですよね。みなさんに覚えて頂きやすい。

毎熊 確かに、記憶に残りやすいかもしれませんね。

阿木 私、つい最近、毎熊さんがお出になった映画「ケンとカズ」を拝見したんですが、随分印象が違っていて。あの時のヘアスタイルは短い。

毎熊 すいません。今はパンチパーマみたいで(笑)。

阿木 いえ、別に謝って頂かなくても(笑)。それにしても毎熊さんは役によって、ガラリと印象が変わる方ですね。「ケンとカズ」の時は、すぐキレる、危険なタイプの若者という感じでしたが。それも地に見えるというか。映画自体、ドキュメンタリータッチでしたよね。

毎熊 製作費用が少なかったので、ああいう撮り方になったんだと思います。

阿木 監督の小路紘史(しょうじひろし)さんは、毎熊さんが映画の専門学校に通っていらっしゃった時の同期だとか?

毎熊 そうなんです。僕も学校では監督専攻だったので、僕が撮る時は、彼に手伝ってもらったりしていたんです。

阿木 ショートムービーをお撮りになってたんですよね。

毎熊 何本かやりましたけど、難しいですね。そういえば阿木さんも、映画監督をなさったことがお有りで。

阿木 恐縮です、私のほうにも話を振って頂いて(笑)。東映で1本、撮らせて頂きました。映画作りはとてもハードでしたが、面白かったです。そういえば、今度ご出演の「轢き逃げ 最高の最悪な日」の監督は、俳優の水谷豊さん。

毎熊 水谷さんは俳優さんとしてもお忙しいのに、監督までなさるのは凄(すご)いなと思います。僕は長編を撮ったことがないので、ちょっと想像がつかないのですが。

阿木 でも、俳優さんとして現場に立つチャンスがお有りになるので、そこでノウハウを学んで、いつかお撮りになればいい。

毎熊 そうなれたら嬉(うれ)しいですね。先日もクリント・イーストウッド監督の「運び屋」を観たんですけど、イーストウッドは88歳で、あんなスリリングな映画を撮るなんて、憧れますよね。

阿木 私が思うに俳優さんには、演技一筋でいかれる方と、演出のほうにも手を伸ばす方の2通り居るんじゃないかなと。水谷さんや毎熊さんは、まさに後者。

毎熊 ありがとうございます。そう言って頂くと、嬉しいです。

阿木 「轢き逃げ」では、毎熊さんは熱血漢の刑事さん。

毎熊 今まで捕まるほうが多かったので、僕としては念願の役で、人生の流れが変わってきたな、と思ってるんです(笑)。

阿木 流れね(笑)。捕まる役から捕まえる側、まさに180度の転換。でも、この世界でよく言うでしょう? 極悪犯人を演(や)れる人は、名刑事ができるって。

毎熊 どこか共通するものがあるんでしょうか? 両者に共通する独特の緊張感みたいな。

阿木 こうお話をさせて頂いていると、東映の岡田裕介会長が毎熊さんに白羽の矢を立てた理由が分かる気がします。毎熊さんが「ケンとカズ」で毎日映画コンクール新人賞をお取りになった時、その表彰式で岡田会長が毎熊さんの目力に惚(ほ)れ込んだんですよね。それで、直々(じきじき)に吉永小百合さん主演の「北の桜守」に出演オファーをなさったとか?

毎熊 本当にびっくりしました。

阿木 岡田会長は、東映カラーにぴったりと思われたんでしょうね。東映は、私の若い頃は高倉健さんの任侠(にんきょう)シリーズが大ヒットし、その後「仁義なき戦い」に続いていく、男性路線の流れがあるので。

毎熊 僕がというより、去年公開された東映映画「孤狼の血」の"この国には牙のない男が増えすぎた"というキャッチコピーが、僕は凄くカッコいいなと思って。

阿木 最近、テレビを観ていると、美形の男優さんが増えたなと感じるんですが、シャワーや入浴シーンでは男性が脱がされてる(笑)。そういう意味でイケメンの男性はいるけれど、目に殺気がある男優さんが、少なくなりましたね。

毎熊 確かに胸毛とか脛(すね)毛とか気にしている男性、居ますよね。

阿木 毎熊さんは?

毎熊 いや、僕はまったく(笑)。

阿木 脱毛とかしていないでしょうね。

毎熊 していません(笑)。

阿木 あー、良かった(笑)。毎熊さんの魅力は、やっぱり目ですね。今時って言い方も何ですけど、パッチリというより、切れ長の一重瞼(まぶた)に陰影がある。この目が多くの監督さんを、惹(ひ)き付けるんでしょうね。

毎熊 僕自身は、運がいいだけだと思ってるんですけど。

阿木 この世界に居たら、運も才能のうちなので。朝ドラの「まんぷく」や映画「万引き家族」など、本当に去年、今年と話題作に立て続けに出ていらっしゃって。水谷組の現場はいかがでしたか?

毎熊 凄く楽しかったです。

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