サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2019年4月28日号
三輪記子 弁護士
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阿木燿子の艶もたけなわ/249

朝の情報番組を中心に活躍中の弁護士、三輪記子さん。東大法学部卒業と聞けば、"エリート街道まっしぐらのキャリアウーマン"の印象ですが、現実には幾度とない挫折があったといいます。これまでの道のりや、働く母としての率直な思いを伺いました。

◇働く女性には、仕事はどんなにつらくても続けたほうがいいと伝えたい。

◇育児に協力的なご主人が居てもなお、子供を産んで大正解とはいえない?

◇今の社会で、誰に対しても「産むっていいよ」とは到底、お勧めできませんね。

阿木 東大に現役で合格して、現在弁護士をなさっているなんてお聞きすると、凄(すご)く優秀な方だなと。

三輪 いえ、そんなことないです。私、東大を卒業するのに7年、司法試験に通るまで、7年かかっていますから。

阿木 もともと三輪さんは、高校も進学校だったんですよね。

三輪 まぁ、そうなんですけど、同志社の付属だったので、エスカレーター式に大学まで行けたんです。でも、それに甘んじる気になれなくて。

阿木 で、東大を目指された?

三輪 私、小学生の頃は成績が良かったんです。その時の友達がみんな優秀で、東大とか京大を志望していた。東大で再会しようね、それが当然だよねという気持ちで受験したんです。

阿木 で、実際に東大に入ったら、みんながあまりに頭がいいので、驚かれたとか?

三輪 そうなんです、本当にびっくりしました。

阿木 ちょっとしたカルチャーショック?

三輪 まさにそんな感じです。頭のいい人って、こんなに居るんだと思いました。

阿木 三輪さんにそう言わせるんだから、やはり相当、東大生は頭脳明晰(めいせき)なんですね。

三輪 私、映画研究会に所属していたんですが、そのサークルが凄くて。みんな、よく飲むんですけど、合間を縫っていつの間にか映画を観ていたり、読書していたり。

阿木 飲み会で、自分の知識にない話題が出ても、知らない、と言ってはいけないんですって?

三輪 そうなんです。それは恥ずかしいことだと、同級生に言われました。

阿木 東大生の辞書に「知らない」という言葉はない(笑)。

三輪 だから、どんなに酔っていても、飲み会から帰ってきたら、その夜のうちに話題になったことについて、調べるんだそうです。

阿木 それ、ちょっと嫌み(笑)。でも、私達凡人と違って、東大に入学するような学生さんは、サラリと本を読んでも、知識としてちゃんと残るんでしょうね。

三輪 そういう生まれつき頭の良い人も居ますし、コツコツ勉強するタイプも居ます。努力できるのも、才能のうちだという言い方もできるし。

阿木 三輪さんはどのタイプ?

三輪 どうなんでしょう。勉強は嫌いじゃないですけど、努力家かどうかは......。東大は他の学校に比べて受験科目が多いんですが、それはどうしてかというと、苦手なものに対しても、努力する人になってもらいたい、という意図が学校側にあるんだそうです。学生時代、先輩から「三輪は自分が好きなことしかやらない。それは違うと思う」と、お説教されたんです。今にして、その言葉が妙に腑(ふ)に落ちて。私にとって司法試験は苦手な分野なので、7回落ちたんだなと感じています。

阿木 よくめげずに(笑)。普通、3回ぐらいで諦めそうですけど。8回も試験にチャレンジなさったモチベーションって?

三輪 私、大学生時代、自分が何に向いているか分からなくて、迷っていた時期があるんです。そんな時、「お前、弁護士になれよ」と映画監督の林海象(はやしかいぞう(注1))さんが勧めてくださって。その海象さんにちゃんとお礼が言いたくて、頑張りました。

阿木 林さんから「あなたは人と接する仕事が向いてそうだ」とアドバイスされたんですよね。で、やってみようかなと?

三輪 それというのも、東大の同級生や先輩がたやすく司法試験に受かっていたので、簡単だろうと思ったんです。

阿木 司法試験を甘く見てた?

三輪 本当にそうですね。

阿木 三輪さんは弁護士になられた後、小説家の樋口毅宏さんと知り合われ、ご結婚なさった。そのきっかけが凄く面白くて。元をただせば縁結びの神様はタモリさんなんですよね。ご主人が書かれた著書、『タモリ論』を読んで、三輪さんは新幹線で号泣なさったそうですけど、あまり泣くような本ではないのでは?(笑)。

三輪 そうですよね。というのも私、2013年に松竹芸能に入ってテレビに出させて頂くようになったんですが、最初はあまり喋(しゃべ)れなくて。自分の考えをきちんと話すことができなかったんです。その前に長く付き合っていた彼氏に凄く影響されていて、彼が言いそうなことを喋っている自分が居た。それが凄く嫌だったんです。それじゃ、自分がテレビに出る意味がないと悩んでいる時期にたまたま『タモリ論』を読んだんです。

阿木 号泣したポイントって?

三輪 『タモリ論』の中で書かれていたのは、タモリさんはタモリさんだけで成り立っているわけではなく、「お笑いビッグ3(スリー)」と言われる、明石家さんまさんやビートたけしさん達と影響し合いながら、それぞれ独自の道を歩いていると。
阿木 それを読まれた時に、自分に肯定的になれたの?

三輪 ええ、人に影響を受けること自体は、別に悪いことじゃないと思えたんです。

阿木 元彼ってやはり東大生?

三輪 いえ、でも、凄く頭の良い人でした。その彼がお笑い好きで、私も水道橋博士のブログを読みだしたんです。それでハマってしまって。その水道橋博士が、夫の処女作を激賞してくれていて、夫の名前を知ったんです。

阿木 ということはご主人は、元彼がつないでくれた、ご縁でもある。

三輪 確かに考えてみたら、そうですね。

阿木 私、今回、三輪さんにお目にかかるに当たって、ご主人の著書『おっぱいがほしい!』を読ませて頂いたんですが、凄く面白かった。ご主人の育児エッセーみたいな感じで、あの本は当然、三輪さんも目を通していらっしゃるんでしょう?

三輪 もちろんです。

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