サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2019年3月31日号
関口知宏 俳優・旅人
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阿木燿子の艶もたけなわ/245

4月公開の映画で、東京から自然豊かな地方へのオフィス移転を決意したIT企業社長役を熱演した関口知宏さん。関口さんは俳優のみならず、数多くの紀行番組でナビゲーター役を務め、絵日記や楽器演奏など、多才ぶりを発揮してきました。旅行経験を通じて展開する"関口流"日本国家・日本人論をお楽しみください。

◇肩書でいうと、僕の場合、"旅人"が一番しっくりくるかなと。

◇旅行のみならず、新作映画でも俳優としての存在感を発揮していますね。

◇最初は断るつもりでしたが、監督の言葉がきっかけで引き受ける気になりました。

阿木 この春公開の関口さんの初主演映画「波乗りオフィスへようこそ」では、主人(宇崎竜童氏)がお世話になりました。

関口 宇崎さんには、こちらこそ、めちゃお世話になりました。

阿木 この映画のテーマは"働き方改革"。とても今日(こんにち)的です。関口さんは優秀な人材を集めるために、本社を徳島県に移すIT企業の社長役で、主人は地元の漁師という設定。で、初日、ロケ現場の美波町(みなみちょう)に足を踏み入れたら、主人は以前にもここには、コンサートで来たことがあると思い出したんですって。それも二度も。だから、この映画とも縁があるんだろうな、と申しておりました。

関口 僕もそういう意味では偶然が重なる人間なので、宇崎さんには最初から、親近感を抱かせて頂いていました。やはり宇崎さんは僕の先輩なんだなと。

阿木 まぁ、年はかなり上ですが。

関口 いえ、そういう意味じゃなく、同じ系列に属しているな、と。

阿木 同じ系列?

関口 僕は旅の仕事で世界中を廻(まわ)ったんですが、行く先々でたくさんの人と巡り合って、国によって傾向があることに気付いたんです。

阿木 あー、「列島縦断」鉄道の旅シリーズですね。私も時折、拝見していました。同じルートを二度通らず、各駅停車で日本中を旅する企画でしたよね。あの旅には海外編もあって、ヨーロッパや中国にもいらっしゃった。トータルにして一体、どのくらいの距離を移動なさったんですか?

関口 地球何周レベルにはなっていると思いますが、兼高(かねたか)かおる(注1)さんと対談させて頂いたら、僕は足元にも及びませんでしたね。多分、兼高さんはトータル、火星ぐらいまで行ったんじゃないですか?(笑)。

阿木 でも兼高さんと、関口さんの旅は、根本的なところで違う気がするんです。関口さんの旅は自然体というか、まさに旅人という感じで。そういえば関口さんは名刺の肩書を"旅人"になさっていらっしゃるとか?

関口 まぁ、僕は旅以外の仕事もしているので、自分自身、確定はしていないのですが。

阿木 旅人を職業にした場合、確定申告の際に、個人的な旅で掛かった費用も経費で落ちるんでしょうか?(笑)。

関口 どうなんでしょう。今から思うと僕、日本人の持つ肩書の意味を分かっていなくて、のんきに決めちゃったなと。

阿木 でも、ちょっと素敵(すてき)です。「職業・旅人」って(笑)。

関口 もともと僕は世間に合わせることが苦手で、いまだに分かってないんです。それに僕がやっていることは一つに限定されないので。

阿木 本当にいろいろなことをやっていらっしゃいますよね。それもかなりのハイクオリティーで。絵も、パソコンで作られる音楽も半端じゃない。

関口 そうでしょうか? 多方面に分散している感じは、自分ではしてるんですけど。

阿木 旅にしても中国の片田舎に分け入って、そこで暮らす老人達とコミュニケーションを取るといったふうで。あそこまで深く、特定の地域に入り込む方は珍しいと思うんです。

関口 肩書でいうと、その人のやっていることで、一番アピールできるものを"ボス肩書"というふうにすると、僕の場合、"旅人"が一番しっくりくるかなと。現に今回の映画の話も、監督が僕の旅番組を観てくれて、オファーしてくださったんです。

阿木 最初に旅の仕事を引き受けた時は、ちょうど芸能界自体を辞めようと思われていた時期だったとか?

関口 そうですね。行き詰まった感じで、もういいかなと。

阿木 もともと旅はあまりお好きじゃなかった?

関口 僕は出無精なので、面倒臭いなと思っていましたね。

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