サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2018年10月 7日号
高中正義 ギタリスト
loading...

阿木燿子の艶もたけなわ/221

1970年代から80年代、日本の音楽シーンの中で"スーパーギタリスト"と呼ばれ、ロック少年たちのカリスマ的存在だった高中正義さん。65歳になった今も音楽に対する情熱は変わらず熱く、今年もライブツアーを敢行。若い頃からお付き合いのある阿木さんも懐かしさで笑顔が絶えず、楽しい音楽談議ややんちゃな昔話に花が咲きました。

◇7年間分の大喜利を録画してあって、それを寝る前にかけて観るのが楽しい。

◇高中さんは何か体にいいことを、やっていらっしゃるんですか?

◇渡辺謙さんにシックスパックの腹筋のやり方を教わったけど、いまだにワンパック(笑)。

阿木 2年前、主人(宇崎竜童氏)が軽井沢の大賀ホールでコンサートをやらせて頂いた折に、差し入れを持ってきてくださって。

高中 はい、アイスクリームを持参しました。

阿木 高中さんは現在、軽井沢にお住まいなんですよね。

高中 あの時は、オラが村さでやる、ということで自転車に乗って、駆けつけたんです。

阿木 主人から聞いたんですけど、主人が高中さんに初めてお目にかかったのは神戸のコンサートホールで、しかも楽屋が一緒だったとか。高中さんはサディスティック・ミカ・バンドのみなさんと真面目にリハーサルをなさっていて、片や主人率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドはその横で全員、プワーッと煙草(たばこ)を吸って、お喋(しゃべ)りをしていたとか。それで10回あったツアーなのに、主人の方はその時の1回で降ろされたと言っておりました。

高中 えっ、それ、僕、まったく覚えてないな。宇崎さんって、とても優しそうですが、昔は不良だったんですか?

阿木 いえいえ、強面(こわもて)は売り出すための作戦で、根はごくフツウの人です。高中さんこそ、かつてはやんちゃだったとか?赤坂警察に逮捕されたことがお有りなんですよね(笑)。

高中 青山のガスコンという店で、賭けポーカーを。

阿木 そこって、桑名正博さんや、坂本龍一さんなど、ミュージシャンが集まる店でしたよね。

高中 朝までやってたんですが、赤坂警察が「はーい、動かないで」って。その時、よせばいいのに僕たち面白がって、知り合いの女性の化粧道具を借りて、女装ごっこをやってたんです。口調も「どおもー」とか言って。で、夜が更けてみんな酔っ払ってきて、ポーカーでもやろうとかいうことになったんです。

阿木 そこを踏み込まれた?

高中 青山通りまで連行され、パトカーに乗せられたんですけど、通勤するサラリーマンやOLさんが歩いているのに、こっちは化粧をして、パトカーに乗せられて、本当に情けなかったですね。

阿木 高額を賭けてたんですか?

高中 大体は5000円とか1万円ですけど、ストレートフラッシュとかに当たっちゃうと、100万単位で動くことがありましたね。

阿木 今のお金に換算したら、結構ですよね。

高中 みんな、若かったから(笑)。

阿木 私、20代の高中さんを武道館で拝見してるんです。お客様の熱気も、ステージ上のパフォーマンスも凄(すご)くて。でも、考えてみたらあの頃から高中さんは、完成された音を出していらっしゃった。そして、今回、対談させて頂くに当たって、資料として頂いたDVDを3本、主人と一緒に観たんです。本当に文句の付けようのないステージで。いろいろな意味でお洒落(しゃれ)で大人。無駄なお喋りをせずに、高中さんの奏でるギターの音色に、どっぷり浸れるような構成になっていましたね。

高中 僕、お喋りが苦手なもので。

阿木 でも、ポロッと何かおっしゃることが凄くおかしい。

高中 一応、考えてはいるんです。

阿木 行き当たりばったりじゃないんですね。主人に聞かせたい(笑)。日比谷野音の還暦記念ライブのメンバー紹介も面白かったです。「僕も還暦なので、それらしくやります。ドラムス、えーと、誰だっけ」というの。私の好きな小話に「最近、物忘れがひどくてさ」「いつから?」「何の話?」っていうのがあるんですが、それに近い(笑)。

高中 僕、テレビ番組では「笑点」が好きなんです。それも大喜利。自慢じゃないけど、7年間分の大喜利を録画してあるんです。それを寝る前にかけて、今夜はどれを観ようかなって感じで。ダジャレを聴いて、笑いながら寝たいんです(笑)。

阿木 私の今の小話は、もしかしたら亡くなった桂歌丸さんが落語の枕でやってらしたのかもしれない。高中さんのライブは本当にサービス精神旺盛で、ギターの表面に鉄道模型を乗せ、電車を走らせたり。

高中 あー、リゾネーターというギターですね。もともとあのギターは横に寝かせて使うので、何か乗せたいな、面白いアイデアはないかと思っていたところ、鉄道模型を作る人と知り合ったんです。

阿木 また「伊豆甘夏納豆売り」という曲では、ギターのネックに風鈴を飾っていらした。そもそもタイトルが面白過ぎます。何なんですか、あのタイトルは(笑)。
高中 以前、所属していたレコード会社のスタジオが伊豆にあったんです。その時の

ベーシストが、イントロのフレーズを「甘夏納豆」と聞こえるって言ったんです。
阿木 甘納豆ってありますけど、甘夏納豆っていうのは聞いたことがありません(笑)。

高中 まぁ、それに伊豆で録音してたから、タイトルを「伊豆甘夏納豆売り」にしようと。

阿木 何といい加減な(笑)。

高中 僕は言葉に関してはセンス、才能ナシなんです。

阿木 でも逆に、高中さんのギターは饒舌(じょうぜつ)ですよね。目を閉じて聴いていると、風景とか物語とかが浮かんできますもの。

高中 僕は中1くらいの時に、ビートルズに夢中になったんですが、その頃は英語力がないでしょう? なのでレコードを聴いて歌詞を片仮名で書いて覚えたんです。そうこうするうちにロックもいいなと思い出し、それも聞きかじりで覚えて。要するに歌詞の内容はどうでもいいんです。ずっと洋楽ファンだったので、言葉よりはメロディー、サウンドなんです。

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム