サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2025年5月 4日号
"特別会計の闇"を指摘した「みのもんた」じゃないけど、財務省デモに!
loading...

牧太郎の青い空白い雲/984 

「衝撃! 特別会計の闇を暴露したみのもんたは、財務省に消されていた......」という動画がネットで話題になっている。

 みのもんたがテレビ朝日系の「報道ステーション」にゲスト出演したのは、20163月末日。一部から「偏向している!」と批判され、番組から降ろされる古舘伊知郎キャスターの「最後の放送回」だった。みのもんたは突如、「特別会計の闇」を取り上げた。「表の国家予算である一般会計に対して、裏の予算の特別会計がある。何に使われているのか? この闇を公認会計士を10人雇って精査すべきだ!」と主張した(例えば、24年度の予算は一般会計112717億円。特別会計は約4倍の436兆円)。

 思い出した。この番組で12年間、キャスターを続けた古舘さんは「情熱をもって番組を作れば多少、番組は偏るんです!」「私は今、こんな思いでいます。『人の情けにつかまりながら 折れた情けの枝で死ぬ』。『浪花節だよ人生は』の一節です。死んでまた再生します!」と話していた。感動した。

 多分、〝古舘+みの連合軍〟は財務省(つまり日本国)の最大のタブー「特別会計」を取り上げたかったのだろう。これが原因かどうかは分からないが、その後、みのもんたは「次男の不祥事」で番組から消された。この頃、みのもんたと東京・浅草で「すき焼き」を食べた時、彼は「司会者という仕事は孤独なんだ」と話していた。

 今冬から財務省前で減税や積極財政を求める「財務省解体デモ」が続いている。生活が苦しくなった元凶は、財政出動をせず、減税をしない財務省!という主張。最近は財務省前だけでなく、地方庁舎にもデモが拡大しているらしい。

 反財務省の抗議デモは以前にもあったが、今回はちょっと違う。経済評論家の森永卓郎さん(故人)が著書を通じて広めた「ザイム真理教」というフレーズが影響している。財務省は財政再建路線をまるで「宗教の教義」のように仰ぎ、政治家やマスメディアへ布教する。財務省はインチキ宗教だと言う! 分かりやすい。深刻なのは......今までのデモは「反権力」だったのに、今回はイデオロギーと無縁な「生活路線」であることだ。この30年、経済成長率はいっこうに伸びず、われわれの賃金はまったく上がらない。生活ができない!のだ。

 ともかく、税金が多すぎる。働いたら所得税、買ったら消費税、持ったら固定資産税、住んだら住民税、飲んだら酒税、吸ったらタバコ税、乗ったら自動車税・ガソリン税 。起業したら法人税、死んだら相続税、贈ったら贈与税......。このほか社会保険料、NHK受信料まである。しかも「退職金税制の見直し」までもくろむ。退職金2000万円で101万円の増税?

 俺だって、財務省解体デモに行きたい!

〝特別会計の闇〟を指摘した「みのもんた」じゃないけど、財務省デモに!

.....................................................................................................................

◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム