牧太郎の青い空白い雲:/986
ゴールデンウイーク明けに、〝知り合い〟が医師から「人工透析の段階です」と言われたらしい。
「腎臓の働きがとうとう10%以下にまで低下。自分の腎臓では自分の体をきれいにできない状態なんですよ!と言われたんだ」
老廃物が蓄積して、放っておけば命にかかわる? 自分の腎臓を諦めて、代わりに透析療法で血液を浄化する必要があるのだろう。80歳になると「透析」の話をしょっちゅう聞かされる。「面倒臭いけれど、やるしかないじゃないか」と言うと、東京・下町に住む同年輩の〝知り合い〟は「でも......それでいいのかなぁ? やらないほうがいいんじゃないか?」と言うのだ。
「なぜだ、透析しないと死ぬぞ」
「問題は費用だよ」
透析には「通院して行う血液透析」と「自宅でできる腹膜透析」があるが、超高額。血液透析は1回あたり約3万円、1カ月で約40万円程度、腹膜透析は1カ月あたり30万~50万円程度はかかる。でも、治療費用は公的助成制度を利用すれば、1カ月の自己負担額を上限1万円(所得によっては約2万円)程度に抑えることができる。
「タダ同然の医療費で、命が助かるんだから御の字じゃないか?」と言うと、彼は「それが、気に入らないんだ」。「1万円で命が助かるっておかしいじゃないか? 同窓生の○○なんて何十万、イヤイヤ何百万をかけても肺がんであっさり逝ちゃった......。第一、透析で大儲(もう)けしている医師がいるんだぜ!」
確かに、透析医師の所得は勤務医よりも高い。勤務医の平均年収は1500万円から1600万円程度とされるが、透析専門医は2000万円から4000万円といわれる。シャント手術(人工血管形成)ができる医師は「透析バイト」と呼ばれる副業を展開している(半日で4万〜5万円)。透析クリニックの売り上げは患者数1人あたり年間102万5640円程度らしい。日本透析医学会の患者調査によると、慢性透析患者は全国で34万人以上。糖尿病患者が増えているので、新たに透析を始める患者は年4万人も増えている。
「透析は一生続けなければいけないから、1人の透析患者を囲えば高級車1台は買えるぜ。こちとら、江戸っ子だい! 金儲けのお医者さんの味方になりたくない」
透析産業は今やこの世の春? 〝知り合い〟の言い分もよく分かる。
庶民の大半が物価高に苦しんでいる。そこで「消費税ゼロ!」という意見も多いのだが、では「財源」をどうするか? 「国民福祉税」のように、新たな税目を導入することを考えている向きもあるけれど......。〝知り合い〟の意見を聞き、減税を機に「補助金の総点検」を始めたらどうだろうか?
「ともかく透析を始めようぜ。命が助かりカネも余ったらどこかに寄付すればいい!」と言ったら、〝知り合い〟は渋々納得した(笑)。