サンデー毎日

スポーツ・芸能
News Navi
2024年8月18日号
東京ドーム沸かせた「長島劇場」 三菱重工East、都市対抗初V  
loading...

 東京ドームで行われた第95回都市対抗野球大会は、三菱重工East(横浜市)の初優勝で幕を閉じた。野球王国・神奈川からの優勝は28回目。大会最多優勝12回のENEOS(横浜市)や7回の東芝(川崎市)など強豪ぞろいの地区に新たな歴史を刻んだ。

 優勝の陰の立役者は、準々決勝から中継ぎで3連投した社会人5年目の長島彰(あきら)(26)だ。計63分の2を投げて自責点0。身長178㌢の変則右腕で、記者や解説者の目線によって投げ方は「サイドスロー(右横手)」になったり、「アンダースロー(右下手)」になったりする。本人に聞くと、「どっちでもいいです。一番力が入るところで投げているので、こだわりはない。まぁ、(横と下の)間ですかね」と笑う。

 130㌔台ながら浮き上がるような軌道を描く直球や、鋭く曲がるスライダーを武器に打者を封じる様は圧巻だ。だが、その魅力は変則的な投球フォームだけではない。人呼んで「長島劇場」。準決勝の東京ガス(東京都)との試合、2番手で登板したときだ。

 30でリードした六回からマウンドへ。先頭打者に四球を与え、盗塁と失策で無死三塁とされ、続く打者の中前適時打で1点を許した。その後も2死一、三塁のピンチを招いたが、無失点で切り抜ける。七回も安打と四球で無死一、二塁とされるが、粘りの投球で得点を許さない。

「自分でピンチを作って、自分で抑えるみたいな。本当はランナーを出さないで抑えたいんですけどね。みんなから劇場型と呼ばれています」

 西関東2次予選のENEOS戦では、2点リードの九回無死、一、三塁でマウンドへ上がると、四球を与え無死満塁に。長打が出ればサヨナラ負けという最大のピンチを演出すると、三振、併殺で得点を許さず、本大会出場を引き寄せた。

 なぜ、ピンチになればなるほど、力を発揮できるのか。長島は「強く腕を振ることだけを考えています。ピンチになるほど、力が入るんです」と言う。

 ルーキーだった2020年の第91回大会。三菱重工広島(広島市)の2番手としてマウンドに上がったが、六回に2本塁打を含む4連打を浴び、4失点して降板。日本新薬(京都市)に25で敗れた。翌21年には三菱重工業の野球部再編が決まっていて、三菱重工広島として最後の大会だった。

「あれが一番下。あれ以上に悪いピッチングをすることはない」

 その経験からピンチになっても開き直り、腕を強く振れるようになった。三菱重工Eastに合流して4年。準々決勝と決勝に先発した大野亨輔(きょうすけ)(30)、橋戸賞(最優秀選手賞)を獲得した本間大暉(だいき)(29)とともに、「投手3本柱」と呼ばれるまでに成長した。

 JR東日本東北(仙台市)との決勝は五回1死満塁の場面で登板して犠飛の1点でしのぐと、六回、七回は3者凡退と危なげない投球でリリーフの本間につなぎ、勝ち投手になった。「優勝は本当にうれしいです」。マウンドにできた歓喜の輪の中で、誰よりも高くジャンプして喜んでいた。

(本誌・山本浩資)

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム