サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2026年3月 8日号
「凪良ゆう」は「現実の世界に居づらい人」を描いているから40万部?
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牧太郎の青い空白い雲/1016

 
「凪良ゆう」さんの小説『汝、星のごとく』を読んだ。 あまり小説は読まないほうだが、本屋大賞を2回も受賞した(2020年・23年)売り出しの女性作家!と聞いたので......。俺には似合わない「恋愛もの」だった。 瀬戸内海の島で暮らす17歳の高校生・井上暁海(あきみ)と青埜櫂(あおのかい)は惹(ひ)かれ合った。櫂は「男出入り」が激しい母親に悩み、暁海は父親の不倫に苦しんでいた。 2人とも「島」から出たい! 櫂は久住尚人とコンビを組み、漫画制作を始め、上京する。でも、暁海は「うつ病の母親」を残し、島を出ることはできない。 遠隔恋愛になった。 櫂と尚人の漫画は大ヒット。ところが、尚人は「男の子」が好きなゲイ。可愛い少年と親しくなり「未成年淫行(いんこう)」が発覚し、2人の漫画は連載が打ち切られる。この頃から暁海と櫂の「思い」に行き違いが生じる。櫂と別れた暁海は、恩師・北原先生と結婚し刺繍(ししゅう)の道に進む......。だが、櫂は胃がんだった。 17歳から32歳までの「2人の出来事」は恋愛ものではあるが......ミステリーがところどころ交じっている。 確かに面白い。40万部も売れているらしい。 作者の「凪良ゆう」さんは1973年生まれ。母子家庭で育った。母は家にいないことが多く、小学校低学年の頃から料理や洗濯、掃除を一人でこなす。小学6年生の時、10日間ほど一人で過ごし、お金も食べ物も底を尽きたのを担任の教師が気づき、児童養護施設で暮らすことになったらしい。高校を中退後、15歳で自立して働き始める。苦労している。 凪良は自身の過去について、こんなことを述べている。「はたから見たら過酷な人生ですが、絶望一色にならなかったのは、物語のお陰です。小学生の時には近所の小さな本屋さんに毎日通い、漫画や児童書を立ち読みしました」 この「立ち読み」が小説家を生んだ。また、「現実の世界に居づらい人たちのことを書いている」とも語っているが......。 たしかに『汝、星のごとく』でも「居づらい人」が何人も登場する。 この典型が「ゲイの尚人」だろう。ゲイ(gay)は、男性に対して恋愛感情や性的魅力を抱く男性。日本でも人口の約10%がLGBTQ(性的マイノリティー)と言われているが......。「同性」が好きになったら......生きづらい。 例えば、部屋を借りにくい。「2人入居可」の物件でも、親族や結婚前提の男女カップル限定だったりする。 いろいろな面で差別される。 LGBTQの権利を守る政策は、先の衆院選でも「議論」にならなかった。「同性婚」を認めろ!はフィクションではなく「現実の課題」のような気がする。.....................................................................................................................

◇まき・たろう 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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