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2024年6月16日号
スポーツ パリ五輪でメダル量産期待! レスリング女子を支える"オヤジたち"
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 パリ・オリンピックでメダル量産が期待されるレスリング女子。実は6人の代表のうち、須﨑優衣、藤波朱理、櫻井つぐみ、元木咲良、鏡優翔の5人の父親がレスリング出身者だ。

 金メダルに一番近いとされる53㌔級の藤波の父俊一さんは、三重県のいなべ総合学園高校のレスリング部監督。藤波は幼少時から、兄とともにマットで転がっていた。俊一さんは現役時代、ソウル五輪(1988年)の代表候補だったが予選で敗れた。

「自分が果たせなかった夢を何とか娘に、という父親もいるけれど、私にはそれは全くない。次の五輪にも執着しなかった」と話し、娘も「全くそういう期待は感じない」と一致する。思春期の娘たちの父親への反発が気になるが、「反抗期らしいことはあまりなかった」(俊一さん)。藤波も「レスリングをやめたいと思ったことは一度もなかった」と話す。

「父娘レスラー」といえば古くは、女子レスリングが五輪競技ではなかった90年代に3度世界王者となった山本美憂さん。父郁榮さんはミュンヘン五輪(72年)の元代表で、熱心に娘を指導した。

 何といっても印象的な父親は元プロレスラーのアニマル浜口さんだ。長女の京子さんはアテネ(2004年)と北京(08年)の両五輪で銅メダル。朗らかな娘と「気合だあー」という父の応援パフォーマンスは、レスリング人気の向上に大きく貢献した。

 オリンピック3連覇の吉田沙保里さんも父親の栄勝さん(故人)は、元全日本王者で、三重県津市の自宅の道場で娘にレスリングを教えた。

 5月末の4日間、東京体育館で行われた全日本選抜選手権(明治杯)はパリ五輪代表が一人も出なかったが、日本レスリング協会の富山英明会長は「レスリングは過去、オリンピックで柔道に次ぐ数の金メダルを日本にもたらした」と、誇らしげに挨拶(あいさつ)した。

 とはいえ、「オリンピックの時だけ注目される」とも揶揄(やゆ)されるこの競技で、最近は圧倒的に女子がメダルを稼いでいる。

 東京五輪も川井梨紗子・友香子の姉妹金メダルや、志土地真優、須﨑優衣の優勝で盛り上がった。この時の6人の代表は、すべて父親が元レスラーで指導者などだった。

 巷(ちまた)にレスリング教室は少ない。幼少から親しむには身近に「レスラー」がいることが大きい。川井姉妹は母初江さんも指導者だが、女子レスラーの五輪の活躍に貢献してきたのは「オヤジたち」である。父親の厳しく優しい眼差(まなざ)しの下、猛練習に耐えた大和撫子(やまとなでしこ)たちの「花の都パリ」での大活躍を祈りたい。

(粟野仁雄)

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 ◇あわの・まさお

 1956年生まれ。ジャーナリスト。共同通信記者を経て現職。著書に『瓦礫の中の群像 阪神大震災』『ルポ 原発難民』など

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