7月26日に開幕するパリ五輪の柔道男子100㌔級代表に、2021年の東京五輪からの連覇を目指すウルフ・アロン(パーク24)が内定した。全日本柔道連盟が2月14日に強化委員会を開き、ウルフを選出。これで柔道は男女全14階級でパリ五輪代表が出そろった。
ウルフは不振が続き、昨年9月の杭州アジア大会は準々決勝で敗退。同12月のグランドスラム(GS)東京大会でも準々決勝で敗退し、敗者復活戦でも一本負けするなどしていた。その間に19歳の新鋭・新井道大(東海大)がGS東京で決勝へ進むなど台頭し、ウルフの五輪への連続出場が危ぶまれていた。
しかし、今年2月のパリGSでは新井が早々に敗退した中、ウルフは決勝に勝ち上がり、その決勝でも内股で技ありを取って優勝。男子日本代表の鈴木桂治監督は「投げて勝ち、持ち味を出した。延長戦になることもなくしっかり勝負をするのを見せてくれた。連覇に挑戦できる」と話した。
ウルフは「柔道をもっと普及させたい」と、東京五輪後はメディア出演などで忙しく体重も大幅増。さらに、けがもあって本格的な復帰が遅れた。パリ五輪に向けては正に崖っぷちだったが、技に切れが戻る一方、ここ一番での勝負強さを見せた。ウルフが得意とする大内刈りは、一本を取るのが難しい技だ。これを東京五輪決勝で完璧なタイミングで決めて、テレビ越しに見たファンを魅了したウルフ。その技を観客が入るパリでぜひ見せてほしい。
全柔連はパリ五輪に向けては「早めに選考された選手の方が五輪で成果を出しているデータがある」などとし、早期内定する方針を打ち出した。昨年6月から国際大会で好成績を上げた阿部一二三、詩(ともにパーク24)の兄妹らをはじめ、かなり早い段階で各代表を選考してきた。
ただ、男子100㌔級はウルフや実力者の飯田健太郎(旭化成)が不振の一方、新井の台頭もあって最後まで代表が決まらなかった。これで東京五輪からの連続出場はウルフに加え、女子の素根輝(パーク24)と高市未来(コマツ)ら計6人となった。
柔道の五輪代表選考には恣意的な要素が残され、かつては女子48㌔級で福見友子に国内で敗れていた谷亮子が、「実績重視」で08年北京五輪の事実上の予選だった世界選手権の代表に選ばれたが、その選考は疑問視された。今回も100㌔超級で斉藤立(国士舘大)が早々に選ばれたことに一部から疑問の声もくすぶる。谷はメダルを取っており、選ばれた選手はメダルを取るしかないだろう。
一方、柔道と並び多くのメダルの期待がかかるレスリングは、1月27日に女子68㌔級の代表決定プレーオフで尾崎野乃香(慶應義塾大)が劇的な大逆転勝利で代表を決め、男女の代表が出そろった。これで両競技の代表全員が決まったが、各国の代表の顔ぶれもそろう頃だ。これからは情報収集が重要になってくる。
(粟野仁雄)