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2023年12月10日号
スポーツ 阪神とオリックスのパレード 大阪と神戸で公務員が「明暗」
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 ポカポカ陽気の勤労感謝の日、「阪神」間が沸いた。プロ野球で38年ぶり「日本一」の阪神タイガースと「パ・リーグ3連覇」のオリックス・バファローズが11月23日、大阪市と神戸市でパレードした。両チームは午前と午後で会場を入れ替えて計4回実施。午前は大阪・御堂筋がオリックス、神戸・三宮―元町間が阪神で、午後は入れ替わった。両方で見たいファンのために阪神電鉄は神戸三宮―大阪梅田間で臨時のノンストップ特急を走らせた。

 午前中にのんびりと三宮に出かけたが、阪神の岡田彰布監督や日本シリーズMVPの近本光司外野手ら、虎軍団が乗るバスに近づけない。午後のオリックスには近づけたが、「山本を見たかった」と残念がるオリ党が多かった。日本シリーズ第6戦でシリーズ新記録の1試合14奪三振を記録したエースの山本由伸投手は、米大リーグとの交渉で参加できなかった。

 自治体や企業で構成する実行委員会は運営費5億円を募るクラウドファンディングを行った。集まったのは23日午後6時現在で9700万円。ただ、企業などからの協賛金を含めると全額確保できる見通しだ。人出は主催者発表で延べ100万人だった。

 異例の神戸、大阪の同時パレードだが、「明暗」を分けた点もある。

 大阪では、府と市は警備や誘導などのため、一般職員を対象にそれぞれ1500人のボランティアを募った。吉村洋文知事は「募集は任意で業務命令ではない」としたが、職員からは「上司から呼びかけられたら断れない。断れば査定に響く」との不満も出たという。一方、兵庫県と神戸市の職員1500人を集めた神戸は、いずれも公務扱いで休日出勤となり、代休が取れる仕組みだった。

 その神戸では今回、「過剰やないの」と怒る人たちが出るほどの警備だった。しかし、それには理由がある。2001年7月に兵庫県明石市の歩道橋で花火大会の見物客11人が「圧死」した悲劇だ。

 雑踏警備の責任を問われて明石市の幹部や警備会社社長らが業務上過失致死罪で禁錮刑となり、不起訴だった明石署長と副署長は検察審査会で起訴相当とされたが、副署長には5年の公訴時効の成立を最高裁が認めて免訴となり、裁判打ち切りとなった。

 忘れられかけた明石の事故は、昨年10月に韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で159人が死亡した雑踏事故で再び注目を浴びた。明石の花火大会では、明石市職員が誘導や警備を担当すると休日出勤扱いや超過勤務費がかかるとして、明石市が民間警備会社に丸投げしたのも事故の一因だった。「悲劇」を繰り返さないためには、過剰警備も致し方ないところか。

(粟野仁雄)

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