牧太郎の青い空白い雲/983
日本維新の会には「おちょこ事件」という名前の自慢話が残っている。
2015年12月19日のことである。東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急の中にある日本料理店「水簾(すいれん)」で、当時の維新のトップ・松井一郎、橋下徹、当時の安倍晋三首相、同じく菅義偉官房長官の4人が会食していた。松井さんが安倍さんのおちょこに酒を注(つ)いで「万博は必要ですよね! 総理!」と切り出した。安倍さんはお酒が比較的弱い。「おちょこ」の連続にドギマギする。すると、松井さんは大きな声で「万博が誘致できれば、その経済効果は6兆円以上になりますよ」。
6兆円? 大言壮語好きな「松井流」の言葉に安倍さんは反応した。
東京五輪後に経済を底上げする一手として万博は役に立つ?
安倍さんはその場で菅さんに「(維新に)協力するように」と指示したという。
万博誘致は、当時「夢物語」だと思われていたが、この日で「流れ」が変わった。橋下、松井の後を継いだ大阪府の吉村洋文知事は「万博は酒を注ぎ倒して実現させた」と松井さんの酒宴の腕を高く評価。この日のことを「おちょこ事件」と話している。
それから10年。大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、4月13日から大阪市の人工島「夢洲(ゆめしま)」でスタートした。松井さんの言ったように「6兆円の経済効果」が期待できるのか? 直近の共同通信の世論調査では、大阪・関西万博に「行きたいとは思わない」が74・8%、「行きたいと思う」が24・6%。人気がまるでない。
吉村知事はX(旧ツイッター)で、【「盆踊り」ギネス世界記録に挑戦します。人数が最大の「最大盆踊り」、国籍が最大の「最多国盆踊り」、一般参加2000人、団体参加2000人、合計4000人募集します】と言っていたが......。前売り入場券は売れていないし(「売り上げ」とされる入場券の多くが企業・団体の購入分?)......ゴールデンウイークが終われば、万博会場に閑古鳥が鳴くかもしれない。
会場建設費もバカにならない。夢洲は「埋め立て途上の湿地」。あちこちで基礎工事が難航。例の「大屋根リング」下の盛り土がどんどん削られ、土台がむき出しになる。各国パビリオンの工事は次々に「計画見直し」となっている。
維新は「夢物語を実現した」と自慢するが、現実は「悪夢の連鎖」ではないか。
でも、「維新」の面々は平気だ。彼らの目的は万博後にカジノを建設すること? 当方から見れば、公金を十分に注ぎ込んで「賭博場」を造っているように見える。
無理が通れば道理が引っ込む!ではないが......道理に外れた事業が幅をきかせる? 万博は「詐欺的イベント」で終わりそうな気がする。