牧太郎の青い空白い雲:/982
駅には本来の駅名の他に「副駅名」という別の名称がある。
東武鉄道は2016年1月から副駅名広告の販売を開始し、東上線の東武練馬駅に「大東文化大学前」、高坂駅に「大東文化大学東松山キャンパス前」、霞ケ関駅に「東京国際大学前」の副駅名が付いた。「副駅名」は広告媒体。鉄道会社が「副駅名」を売って儲(もう)けようとする?
今年2月5日、日本で一番長い名前の「副駅名」が誕生した。
伊豆急行線の伊豆北川(ほっかわ)駅(静岡県東伊豆町)。その副駅名は......。
「北川あじ鮨(ずし)を食べて、波打ち際の露天風呂黒根岩風呂に入り、ムーンロードに出会う駅」
東伊豆町の「北川」は人口約200人の港町。アジの鮨が名産。昭和初期に発見された温泉「黒根岩風呂」が有名だが、最大のウリはムーンロード。東海岸のどこに立っていても、夜の海面に水平線から「不思議な月の光」が真っすぐ自分に向かって伸びてくる。神秘的な自然現象である。伊豆北川駅は「副駅名」でグルメ、健康、宇宙を自慢している(ちなみに、本物の駅名で、日本一長いのは「トヨタモビリティ富山Gスクエア五福前」富山地方鉄道富山軌道線 呉羽線)。
ともかく、長〜い名前はそれだけで話題になる。伊豆北川駅には今まで以上に観光客が集まるだろう。
人さまも同じである。「牧太郎」はたった3文字だが、たとえば......「藤本(ふじもと)太郎喜左衛門将時能(たろうきざえもんのしょうときのり)」という長〜い名前の人物がいる。奈良県明日香村にある建設工事会社「藤本工務店」の社長さん。いつも「長〜い名前」が話題で、「注文」が続き繁盛しているらしい。
でも、政治部記者だった頃「長〜い名前」に辟易(へきえき)したことがある。何が書かれているのか分からない「長〜い名前の法案」である。
たとえば、今国会で防衛省が3月14日に提出した「日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案」である。
ともかく長〜い。僕の知る限り、この法案、新聞記事になっていないような気がする。「長〜い名前」を正確に記事にするのは結構、難しい。だから記事にならない?
どんな法案か。たぶん防衛の分野で、同盟国に有利になるよう、道路運送法及び道路運送車両法の適用除外、刑事手続き等の特例を決めた法律案だろう。どこまで同盟国の「特別扱い」を認めるか?を決める法律案だから、徹底的に議論するはずだが......長〜い長〜い法律名にうんざりしてか?記者さんはこの法案を積極的に報道しない。
防衛省は意図的に「長〜い名前」を使うことで議論させない「魂胆」か? 断じてそんなことはないと思うが......。つい邪推した(笑)。