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2023年11月 5日号
金融 「笠置シヅ子」が育ったOSK 「ブギウギ」効果で浮上なるか
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 NHKの連続テレビ小説「ブギウギ」。〝ブギの女王〟笠置(かさぎ)シヅ子(1914〜85年)をモデルにしたヒロイン、花田鈴子(福来スズ子)がスター歌手になり、日本中に元気を届ける物語だ。その笠置が所属していたのが「OSK日本歌劇団」だ。かつては宝塚歌劇団、松竹歌劇団(SKD、96年解散)と並び「3大少女歌劇」として、その黄金期を築いた。

 OSKは1922(大正11)年に松竹楽劇部として創設された。「OSK」は、以前の劇団名であった「大阪松竹歌劇団」の略称だ。団員の正装は紫の着物に緑の袴(はかま)。テーマソングは「桜咲く国」で、シンボルマークには桜の花が使われている。また、「ダンスのOSK」と呼ばれ、高く足を上げ、スピード感のあるラインダンスで知られる。レビュー公演の最後に、桜色のパラソルを回しながら、「桜咲く国」を歌うのが定番となっている。

 かつて宝塚歌劇団と同じ関西でしのぎを削り、「歌の宝塚、ダンスのOSK」と呼ばれたほどだった。しかし、いち早く東京進出した宝塚歌劇団に大きく差をつけられることになる。

 笠置が頭角を現したのは、そうした苦しい状況下の33年のいわゆる「桃色争議」がきっかけだった。この時にスタークラスの劇団員が大量に退団するなど危機に瀕(ひん)する。一方、三笠静子(後の笠置シヅ子)、美鈴あさ子(後のアーサァ美鈴)、柏晴江(後の柏ハルエ)ら新スターが台頭した。

 さらに戦後は57年に松竹から独立して「大阪松竹歌劇団」となり、71年以降は近鉄グループの傘下に入った。だが、低迷から抜け出せないまま、親会社の近鉄は業績悪化を理由に2003年に支援を打ち切り、一度は解散する。その後、劇団員の有志らは「OSK存続の会」を作り、支援を呼びかける署名運動を展開して新たなスタートを切ったものの業績は低迷する。

 07年には民事再生手続き開始を申請し経営が破綻。しかし、その後はダンススクール経営などを手掛けるワンズカンパニー(大阪府吹田市)に事業譲渡された後、大阪市のIT関連企業ネクストウェアの支援を仰ぎ、18年8月に同社の完全子会社となった。

 22年には創立100周年を迎え、「ブギウギ」の放送という好材料もあり、23年3月期から今期(24年3月期)にかけて順調な滑り出しを見せている。「常設会場では月80回公演が可能となり、インバウンドによる観客動員数の増加もあって今期の業績は非公開ながら、増収増益が見込まれています」(大手信用情報機関幹部)。ただ、23年3月末時点で長期借入金855万円、短期借入金1億円、1年返済長期借入金1584万円があり、有利子負債総額は1億2439万円で、有利子負債構成比率は93・97%に及ぶ。「23年3月期の財務内容は債務超過の状態であり、借入に依存した資金運営を余儀なくされている」(同)

 宝塚は「清く、正しく、美しく」という有名な教えがあるのに対し、これをもじって「清く、正しく、たくましく」と評されることが多いOSK。「ブギウギ」効果でどこまでたくましく浮上できるか。

(森岡英樹)

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