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2023年7月16日号
スポーツ 藤波朱理が吉田沙保里を抜く 122連勝でパリ五輪代表へ前進
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 もはや敵なしだ。女子レスリング界に彗星(すいせい)のように登場した19歳、藤波朱理(あかり)(日体大)。その2024年パリ五輪出場は間違いなさそうだ。

 6月に東京体育館で開かれた明治杯全日本選抜選手権の女子53㌔級決勝で、藤波は清岡もえ(育英大)にテクニカルフォール勝ちして優勝し、大会3連覇を達成した。昨年12月の全日本選手権に続く優勝で、9月にベオグラードで開かれる世界選手権の代表入りの条件を満たした。ここで藤波は3位以内に入れば、パリ五輪代表が内定する。藤波は試合後、「優勝した瞬間、世界選手権で優勝する目標がすぐ浮かんだ。去年(直前のけがで棄権)悔しい思いをした同じベオグラードなので、絶対にパリ五輪の代表権を勝ち取りたい」と笑顔で決意を語った。

 この大会の最大の目標が「打倒・志土地」だった。この階級の東京五輪の金メダリストは志土地真優(旧姓向田、ジェイテクト)で、志土地は五輪への連続出場を目指し、藤波の前に立ちはだかっていた。

 2人は準々決勝で激突した。藤波は1ピリオド1分過ぎにタックルからバックを奪って先制。その後はタックルに入ったところ、逆に抱えられて投げられ、失点した。しかし、2ピリオドも攻めまくり、残り23秒にフォールで仕留めた。起き上がった志土地の手を握り「ありがとうございます」と言葉をかけた。

 藤波は「憧れていたけど今は乗り越えるべき相手でした。(対戦が)楽しみで志土地選手のことを思わない日はなかった。あの人を倒したいと思ってここまで頑張ってきた」と喜んだ。

 大会中には五輪3連覇の吉田沙保里さんが持つ連勝記録119を抜いて、122まで伸ばした。最高記録は五輪4連覇を果たした伊調馨さんの189連勝(不戦敗を除く)だが、藤波は「特に何も思っていない。五輪で優勝することが自分の中で一番の目標なので」と記録には無関心なようだ。

 父の俊一さんは三重・いなべ総合学園高でレスリング部監督を務める。この日は父娘(おやこ)が並んでの記者会見もし、藤波が「(父が)栄養のある野菜スープを作ってくれる」と話すと、俊一さんが横から「スープじゃなくて鍋だよ」。その俊一さんは愛娘が昨春、同校から日体大に入学し、それからは東京と三重を忙しく往復。藤波の技の幅も広がっている。

 決勝で、藤波は相手がタックルに来る瞬間に後ろへ足を伸ばしてかわし、素早く背後に回り反撃するなど成果を見せた。見ていても攻守に欠点がない。それでも「まだまだ伸びしろはあると思うし」と自己分析していた藤波。俊一さんは「本当にレスリング一筋で努力していますよ。テレビなんか見ているのも見たことないし」とたたえる。

 レスリング界の「父娘」といえば、プロレスラーのアニマル浜口さんと、04年アテネと08年北京の両五輪の72㌔級で銅メダルを獲得した京子さんだろう。藤波家の「父娘物語」も、これから楽しみだ。

(粟野仁雄)

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