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2022年11月20日号
スポーツ 波乱か「パリ」への世代交代か 講道館杯で「東京」の4人敗退
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 講道館杯は、正式には「講道館杯全日本柔道体重別選手権大会」という。1976年からの歴史があり、五輪代表の多くがこの大会を制した。昨年の東京五輪の男子66㌔級金メダルの阿部一二三は神港学園高(神戸市)2年のときに(2014年)同級を制し、若くして世界へ躍り出た。

 今年1月に予定されていた21年度大会はコロナ禍で中止。2年ぶりの大会は10月29、30日に千葉ポートアリーナ(千葉市)で開かれた。阿部一二三、詩兄妹(うたきょうだい)ら10月の世界選手権に出場したばかりの選手らは不参加の中、5人の東京五輪代表が出場。ところが4人が敗れてしまった。

 男子100㌔級金メダルのウルフ・アロンは準決勝で天理大の植岡虎太郎に、指導三つを受けての反則負けで3位に。バラエティー番組への出演も多かった人気者は、「練習はよくできたが、やはり試合は全然違うと感じた」と述べた。

 100㌔超級の原沢久喜は決勝で国士舘大の新鋭・髙橋翼の巧みな寝技に屈した。90㌔級の向翔一郎は16年リオデジャネイロ五輪金のベイカー茉秋(ましゅう)に、無理な技を繰り出したところをつけ込まれて押さえ込まれた。「お客さんにも喜んでほしく、捨て身技にいったけど」と悔やんだ。東京五輪女子57㌔級で銅メダルの芳田司も、決勝で玉置桃に指導三つで敗れた。

 今、柔道界では「2世」も注目だ。4月には五輪連覇を果たした父、仁さんに続いて「親子2代で柔道日本一」を達成した斉藤立(たつる)は、講道館杯は不参加。1992年バルセロナ五輪銀の小川直也さんの息子・雄勢も直前のけがで出場辞退した。一方、「平成の三四郎」と呼ばれ、昨年3月に他界した古賀稔彦さんの息子2人(73㌔級の颯人(はやと)、60㌔級の玄暉(げんき))は、決勝まで進んで会場を沸かせていた。

 実戦感覚が戻らなかったこともあろう。ともに五輪代表たちの敗北は、伝統大会のレベルの高さの証明でもある。とはいえ4人に今一つ覇気が感じられない。コロナ禍で1年延期になった東京五輪から1年あまりで、燃え尽きたわけではなかろう。全日本柔道連盟の金野潤強化委員長も「モチベーションを失ったわけではないはず」と話した。

 大会後には12月に東京体育館で国際大会・グランドスラム(GS)東京大会の男女各階級4人ずつの代表が発表された。73㌔級は五輪連覇の大野将平も選ばれたが、大野は「コンディションができていない」と全く試合に出ておらず、異論もあったという。

 全日本男子の鈴木桂治監督は「決してリオと東京で2連覇しているから、選んだわけではない。出場基準は直近の2年間の試合。それを検討した結果、大野選手は(GSの)金メダルに最も近いと判断しました」と説明する。

 ただ、24年パリ五輪まで2年を切った。GS東京には阿部兄妹や講道館杯で敗れた東京五輪代表に加え、斉藤立や古賀玄暉が出場選手に名を連ねる。もう不参加の言い訳は通用しない。新世代も台頭する中、GS東京はパリに向けての「ガラガラポン」の舞台となりそうだ。

(粟野仁雄)

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