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2022年10月16日号
村田兆治事件が教える「誰でも現行犯逮捕される」ご時世?
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牧太郎の青い空白い雲/880

 ちょっぴり、昔の話になってしまったが......。無理やり強行された「安倍国葬」の警備の影響なのか、「マサカリ投法」の元プロ野球選手・村田兆治さん(72)が逮捕された〝悲しい顛末(てんまつ)〟を書きたい。

 9月23日の昼下がり。村田さんは羽田空港(第1ターミナル北ウイング)の保安検査場で、金属探知機に向かった。ところが、何度も何度も引っかかり、つい腹を立て女性検査員の肩を押してしまったという。「男性が暴れている」と110番通報。現場に駆けつけた警察官は村田さんを暴行の疑いで現行犯逮捕した。

 はっきり言わせてもらうが、この程度のトラブルで、逮捕されるのか?違和感を持った。

「逮捕」には3種類ある。早朝に被疑者宅に警察関係者が訪れ、逮捕状を示して逮捕するのが「通常逮捕」。罪を犯した場面を発見し、すぐさま取り押さえて逮捕するのが「現行犯逮捕」。犯行の場面を見たわけではなくても、明らかに罪を犯したと考えて「緊急逮捕」する場合もある。

 今回のケースは「現行犯逮捕」。

 刑事訴訟法212条に【1現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする。②左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。一 犯人として追呼(ついこ)されているとき。二 贓物(ぞうぶつ)又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器(きょうき)その他の物を所持しているとき。三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。四 誰何(すいか)されて逃走しようとするとき】とある。

 村田さんは「兇器」を持っているわけでも、逃げようとしたわけでもない。果たして、逮捕する必要があったのか?(「強制処分法定主義」というものがあり「警察や一般人による被疑者の身柄拘束は、法的な根拠がない限り行ってはならない!」としている)

 警視庁はなぜ「逮捕」を選択したのか? 実は、政府は東京五輪開催を前に「テロに強い空港」を目指し、検査協力を徹底強化。今年3月、法的に曖昧な位置づけだった保安検査を義務化した。乗客は保安検査を受けずに進むと「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられる!と航空法で定められた。検査協力を義務化したとはいえ、「検査が遅い!」とのクレームが多いのが現状だった。

 村田さんが「現行犯逮捕」された23日は「安倍国葬」の4日前。警視庁は安倍銃撃事件で懲り、徹底的な検査体制を敷いたのだろう。

 どんな有名人でもテロ防止に協力しないと逮捕する!とメッセージを送ろうとしたのではないか。それにしても、日本は「お上が気に入らなければ、誰でも逮捕する国」になったかのようだ。これでは「戦争反対」を主張して一日1000人以上の市民が拘束されるロシアと同じじゃないか? 皆さん、逮捕されないようにしよう(笑)。

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