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2022年5月22日号
スポーツ 父仁氏に続き斉藤立が初優勝 親子で史上初の柔道日本一に
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 アスリートには「ここだけは絶対に負けられない」という思いで臨む試合がある。そんな気合が伝わってくる決勝だった。柔道日本一を争う全日本選手権は4月29日、東京・日本武道館で行われ、20歳の斉藤立(たつる)=国士舘大=が決勝で昨年の世界選手権覇者の影浦心(こころ)(26)=日本中央競馬会=を延長の末に破り、初優勝を飾った。1984年ロサンゼルス、88年ソウルと95㌔超級で五輪連覇した父の仁氏も88年の全日本で優勝しており、史上初の親子2代での制覇となった。100㌔超級で世界選手権(10月、タシケント)代表にも初めて入り、2024年パリ五輪に向けて大きな期待がかかる。

 五輪連覇を成し遂げ、15年に肝内胆管がんで亡くなった仁氏(享年54)が、執念を燃やした大会だった。山下泰裕・現全日本柔道連盟会長が1977年から9連覇した全盛期で、仁氏は何度もはね返された。27歳で念願の初優勝を飾ってから34年。他界後に初めて当時の映像を見た次男の立は「『執念』という言葉が表れているような試合だった」と心に刻んだ。この決勝も父から受け継がれた「執念」を世界王者にぶつけた。

 なかなか決着がつかず、14分を超える延長。難敵に対し技をかけ続け「死んでも勝ってやろうと思った」と、亡き父からの無言の後押しを受けた足車で技ありを奪った。

 かつては日本のお家芸だった柔道も、外国勢の台頭が目立つ。最重量級も父の指導した08年北京五輪の石井慧(さとし)の後、3大会連続で金メダルから遠ざかっている。新王者は「まだ喜べない。五輪で優勝しないと父と肩を並べるレベルではない」と気持ちを引き締める。191㌢、160㌔の巨体にして内股、体落とし、払い腰などの投げ技も切れ味が鋭い一方、同時にけがの不安もある。いかにパリにピークを合わせるかが課題になるだろう。だが、親子での五輪制覇に一歩を踏み出したのは確かだ。

(水木圭)

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