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2021年8月 1日号
芸能 宇多田ヒカル語った母への思い 改めて注目される怨歌の藤圭子
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 シンガー・ソングライターの宇多田ヒカルが、自身のインスタライブで6月、2013年に62歳で自殺した母親で演歌歌手の藤圭子への思いを語った。宇多田がこれまで藤について語ることは少なかったが、強い個性から根強いファンの多かった「怨歌(えんか)歌手」藤が改めて注目されている。

 宇多田は「なかなか母親の写真が飾れなくて」「自分がどう反応するかわかんなくて怖くて。でも7年くらいたってやっと飾るようになった」と話した。「母親を幼い頃に亡くしたフォロワーの質問に答える形で、宇多田が母の死からどうやったら前に進めるか模索し続けたと語った」(藤の生前を知るライター)

 岩手県出身の藤は、幼い頃から浪曲師の父と同じく浪曲師で目が不自由な母親のドサ回りに同行して、自らも歌って旅生活を続け、北海道の中学を卒業。家が貧しかったことから高校進学を断念。歌手を目指して上京した。

「生活のために母親と東京・錦糸町や浅草を流している時に作詞家の石坂まさをさんに出会い、1969年に『新宿の女』でデビュー。バカだな、バカだな、だまされちゃってのフレーズは70年代の全共闘世代の共感を呼んで大ヒット。その後も次から次へとヒットを飛ばしたんです」(当時のレコード関係者)

 71年に前川清と結婚したが1年で離婚。79年に突然、芸能界を引退して、渡米したが、2年後に帰国して復帰。アメリカ滞在中に知り合った宇多田照實(てるざね)さんと再婚。二人の間に長女光が誕生。成長したヒカルが全米デビュー後、離婚した。

「2013年の3月に石坂さんが亡くなった葬儀に、藤は来なかった」(スポーツ紙記者)

 生前、藤は親しい関係者に芸能界への恨みを語っていた。芸能界に絶望していたことは想像に難くない。小説家の五木寛之さんが藤の歌を「怨歌」と評したが、生き方そのものが怨歌だったのかもしれない。

(本多圭)

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