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2024年2月 4日号
経済 株式売り始めた日銀の受け皿は2000兆円超の個人金融資産か
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 2024年の株価は、バブル後の最高値を更新する好調なスタートを切った。市場では1989年12月29日に記録した「バブル期の日経平均株価の最高値3万8915円を超え、4万円台に突入する」といった強気の予想も聞かれる。

「日銀の金融政策転換による金利上昇と円高は株価の重しになるでしょうが、政府の資産運用立国実現プランに起因する各種施策が日本株の追い風となることは間違いありません」(大手証券会社幹部)という。その最大の施策が2024年1月からスタートした新NISA(少額投資非課税制度)だ。

 新NISAは旧NISAの進化版のようなもので、非課税期間は無期限になり、年間投資できる非課税枠も投資限度額も拡大される。具体的には「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の二つがあり、「つみたて投資枠」は毎月一定額の投資信託を買っていくもので、年間120万円まで、総額で600万円まで非課税で投資できる。一方、「成長投資枠」は、ETF(上場投資信託)や内外の個別株を年間240万円まで、総額1200万円まで非課税で投資できる。注目されるのは、この「成長投資枠」での個別株への投資だ。

 個人の金融資産は2100兆円を超えるが、その半分以上は現預金で占められており、株式は10%強にすぎない。その1%でも新NISAを通じて個別株投資に向かえば、市場インパクトは計り知れない。

 一方、こうした株価上昇の陰で、日銀は密(ひそ)かに保有株の売却に動いている。日銀は、黒田東彦(はるひこ)前総裁の異次元緩和の下、ETFを通じて株式を大量に買い上げてきたが、既に23年はETFの売却額が買い取り額を上回る「売り越し」となっているというのだ。

 日銀は異次元緩和で年間4兆〜6兆円を超えるETFを買い上げてきた。昨年9月末の保有残高は時価で約61兆円に及ぶ。「日銀のETF買いが安心材料となって海外投資家の買いを誘い、日経平均株価の上昇を呼び込んだ。結果、日銀は日本企業の最大の株主になっている」(大手証券幹部)とされる。ただ、21年の政策修正を機に減少に転じ、23年のETF購入額は約2100億円にとどまった。

 一方、23年のETF売却額は3000億円を超えたと見られており、売却超過となっている。この売却について日銀は「02〜04年と09〜10年に、金融機関が保有していた株式を購入した分を、順次売却しているもの」と説明する。この株式購入は銀行経営を株式の価格変動による悪影響から遮断するために実施されたものだ。売却超過となっているのは、異次元緩和で購入したETF分とは別というわけだ。

 しかし、お金に色は付いていない。新NISAスタートもあり、暴騰している株価を利して異次元緩和分も売りに動く可能性はある。受け皿になると予想されるのは個人の金融資産だ。

 だが、ETF残高が増えるにつれ、その出口戦略は難しくなる。「最大の保有者である日銀が売りに出れば、それだけで株価は下落し、日銀は損失を抱えるというジレンマに直面する」(市場関係者)ためだ。すんなりと個人投資家が受け皿となるか予断を許さない。

(森岡英樹)

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